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2018年8月15日 / 09:18 / 3時間前更新
トルコ危機、世界金融秩序の凋落を露呈
Edward Hadas
[ロンドン 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トルコの通貨危機は予想しやすかった。それよりも驚くべきは、世界の反応の弱さだ。従来の世界金融秩序が非常に惜しまれる事態だ。

大規模な経常赤字を補うため短期融資に頼り続けてきた国に、大混乱が起きることはほぼ必然といえる。それだけではない。多額の外貨建て借入金と高インフレが、混乱を拡大した。トルコ政府が、経済維持の一助となった国際金融機関の助言をはねつけたことも、混乱に拍車をかけた。

トルコのエルドアン大統領が、これまで深刻な問題を回避できたのは幸運だった。しかし現在、彼は危機に直面している。自国通貨リラは5月初め以降、対ドルで42%下落。国内で金融危機が起きるのを防ぐには、奇跡か国際支援が必要だろう。

2009年、エルドアン氏が当時首相として率いていたトルコ政府が、国際通貨基金(IMF)からの助言をもはや必要としないと発表してから、トルコは大きく様変わりした。「つえなしで前に進む」ことを選んだのだ。

トルコは長年、IMFの支援に大きく依存していた。1970年から2009年に至る大半の期間で、IMFから「スタンドバイ取り決め(SBA)」を受けてきた。トルコ政府が経済改革に取り組み続ける限り、IMFは支援を約束した。

だが今回、IMFはいまだにトルコからの電話を待っている。IMFにはリラを安定させるのに必要な知識と、恐らくそのための資金もあるが、エルドアン大統領はIMFをトルコ国民の「敵役」に選んだ。

IMFに対する反感は大統領の国家主義的で独裁主義的な意図に沿うものだが、同時に痛ましいパターンにも一致する。伝統的な権力者は、世界的な金融問題に見舞われると、身動きが取れなくなる。

自由貿易や自由な資本移動、自由市場の原則にやみくもに忠実だと広くみられていることで、IMFの名声は傷つけられた。2011年から専務理事を務めるクリスティーヌ・ラガルド氏の下でIMFのアプローチは軟化したものの、トルコの頑なさは、かつては存在したモラル的権威がIMFに欠けていることを示唆している。

そして米国はかつて、反抗的な政府や債権者、交渉者に圧力をかける際には信頼できる圧力源だった。世界金融システムの管理人として、軍事的覇権を握る国として、また世界最大の経済国として、米国は強力なアメとムチを持っていた。

だがそれはもう過去の話だ。

トランプ米大統領は、米国市民のアンドリュー・ブランソン牧師がトルコで自宅軟禁されていることの報復として、トルコに追加関税をかけることでこの危機を悪化させた。トランプ政権は、北大西洋条約機構(NATO)同盟国であるトルコの経済的運命に、あるいは敵対的で弱体化したトルコが中東での米国の権益に与える影響に、無関心のように見える。かつては世界秩序の保証人だった米国は、ならず者になった。

一方、経済力のある欧州連合(EU)は2017年のトルコ輸出の47%を受け入れている。欧州の銀行は、トルコの財政リスクにもっともさらされており、同国の混乱を収束するのを支援する動機がある。

さらに言えば、トルコには推定350万人のシリア難民がいる。トルコが受け入れなければ、一部は欧州に向かっているかもしれない。

とはいえ、EUがトルコに支援を働きかけようとしているようには見えない。エルドアン大統領は楽な交渉相手ではないが、ブリュッセル、あるいは他のEU加盟国から支援の公的な申し出を受けていない。

従来の世界金融秩序が古くさく、大きな欠陥があることはほぼ間違いない。IMFは長いこと硬化したままだし、米国は必ずしも誠実な仲介者ではなかった。欧州の結束が十分であったことは一度もない。この3つは、世界金融システムの無謀な傾向を抑制するのにほとんど何もしなかった。それでも、失速し、エンジンが止まりかけて煙を出しているオンボロ車のように、歩くよりは好ましいものとされている。

では、次に何が起きるのか。
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