8/29(水) 10:55配信
デーリー東北新聞社

 青森県南部町は28日、戦国時代に北奥羽地方最大の勢力を誇った三戸南部氏が城館とした同町の史跡「聖寿寺館跡(しょうじゅじたてあと)」で、16世紀前半に作られたとみられる犬形土製品が、北東北地方で初めて出土したと発表した。安産祈願のお守りだったと考えられ、当時国の中心だった近畿地方から持ち込まれた可能性が高いという。所有できたのは有力な武将などに限られ、三戸南部氏の中央との交流や権威の高さを裏付ける発見となった。

 7月30日の発掘調査で1点が見つかった。大きさは高さ3・5センチ、長さ6・6センチ、幅2・2センチ。手で粘土を整形した手づくね製で、前足や後ろ足、耳、尾が欠けていた。欠損箇所は摩耗し、壊れた後も手元に置いて、大切にされていたことがうかがえるという。

 出土したのは、当主が居住したとみられる中心区画のうち、東北最大規模の大型掘立柱建物跡が発見された地点から北東へ12メートルの場所。倉庫や工房と思われる竪穴建物跡の地表を40センチ掘り進めたところ、土の中に紛れていた。同じ場所で16世紀前半の陶磁器が見つかり、年代を特定した。

 町によると、犬形土製品は江戸時代に安産祈願に用いられていたことが分かっている。それより以前の中世の文献に記述はないが、豊臣秀吉が活躍した16世紀末から17世紀初頭に作られたものが、近畿地方で多く見つかっている。

 関東地方での確認はまれで、東北地方では上杉氏が治めた山形県酒田市の亀ケ崎城跡、共に伊達氏が関わる仙台市の仙台城跡、福島県伊達市の梁川城跡の計3カ所のみ。所有できたのは、中央と交流する手段を持った有力武将に限られたと推測されている。

 史跡聖寿寺館跡調査整備委員会の三浦圭介委員長は「中央の文化がストレートに入っていることは大きな意義。三戸南部氏の文化について考える手掛かりになる」とした。

 犬形土製品は史跡聖寿寺館跡案内所で9月1日から10月31日まで特別公開される。同史跡ではこれまでも東北唯一の金箔土器など三戸南部氏の格式の高さを示す遺物が見つかっていた。

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