西日本豪雨で被害を受けた産地がインターネットで資金を募るクラウドファンディング(CF)を使う動きが広がってきた。
農家の被災状況や復興への取り組みを紹介し、共感した支援者が寄付する仕組みだ。
被災者個人では復旧の費用が賄えない甚大な被害に、全国から支援の手が差し伸べられている。(田中秀和、丸草慶人)

かん水設備修復期待 愛媛

 愛媛県では、甚大な被害を受けた宇和島市吉田町の若手農家がCFによる資金募集を7月31日から始め、29日までに857万円が集まった。
目標額は9月中旬までに2000万円。
ミカン収穫期を控えて復旧作業が急ピッチで進む中、行政側の負担が示されていないスプリンクラーの修復などに充てる予定だ。

 「生き残ったミカンだけでも食べてもらいたい」。
取り組みを提案した山本利輔さん(37)は園地が土砂に流された。
CFの専用サイトやインターネット交流サイト(SNS)で、被災農家として産地の苦境を伝えている。
山本さんは「消費者に産地の現状を直接訴えたい」と狙いを話す。

 募集する資金は1口3000円から。
5000円以上の寄付に対し、ジュースやかんきつの返礼品を用意した。
産地全体で復興を進めるため、寄付先は、地元のJAえひめ南玉津共選管内のスプリンクラーを管理する三つの防除組合にした。
山本さんは「寄付をきっかけに吉田町や玉津の名前が記憶に残る。時間がたっても、スーパーで見掛けたときに思い出してほしい」と前を向く。

 同共選の共選長、山本計夫さん(65)は「クラウドファンディングという方法を知らなかった。若い発想で全国に産地の現状を発信してほしい」と期待する。

 JAえひめ南は、復興支援をする一般社団法人RCFや宇和島市と連携して7月27日〜8月10日にCFを実施。約500万円が集まった。
農業用ポンプの再整備などの費用に充て、地元のかんきつ農家の復旧を支援する。
農家から「絶望していた農家の希望が見えてきた」といった感謝の声が上がっている。

愛媛県で被災した農家が始めたクラウドファンディングの画面(愛媛県宇和島市で)
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イノシシ肉販売再開 島根

 島根県美郷町で野生イノシシ肉の加工と販売を手掛ける「おおち山くじら」は、西日本豪雨で食肉処理施設が浸水した。
捕獲したイノシシを運ぶ軽トラックや加工処理で使うスライサーや金属探知機などが故障。
保管していた在庫肉の多くを失った。
被害総額は約2000万円に及び、一日でも早く事業を再開しようとCFを活用した。

 同社は被災直後の7月10日から、インターネット上で寄付を募る民間サービスを使ってCFを開始。
並行して、ホームページやメールマガジンで被災した状況や復旧作業の様子を発信した。

 支援額に応じた返礼品として、イノシシ肉を使った缶詰めや骨付きハム、イノシシを処理するナイフに名前を刻める特典を用意した。
募集期間の2週間で、地元だけでなく県外から支援があり、約300人から総額350万円を超える資金が集まった。

浸水被害に遭った食肉処理施設。機材の洗浄など復旧作業が進んでいる(島根県美郷町で)
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https://www.agrinews.co.jp/p45035.html
2018年08月30日