兵庫県内を縦断し、大きな被害をもたらした台風21号。同県伊丹市に住む記者(32)の自宅は停電と断水に見舞われ、4日午後から6日夕に復旧するまでライフラインが断たれた。備えが十分でない中、「当たり前」の暮らしのありがたみを痛感した。

 4日は台風接近のため、11カ月の長男と自宅待機をしていた。雨風が強くなった午後2時ごろに停電し、続いて断水した。沖縄育ちで台風には慣れていたが、夕方になっても電気は付かず、事態の深刻さを思い知る。長男は薄暗い部屋での夕飯に不安を感じたのか、離乳食を半分以上残してしまった。

 備蓄がほとんどなく、懐中電灯は知人から借りた。「兵庫の被害すごいね」。遠方の家族から連絡が来たが、情報収集もできず、実感は湧かなかった。4日夜は、うちわで扇ぎながらカップラーメンを食べた。

 断水は深刻だった。トイレは1回流すのに10リットル以上必要で、ごみ箱をバケツ代わりに近くの公園まで何度も水くみに行った。食器はラップをかぶせて使い、水洗いしない工夫をした。

 非常時は、住民同士の協力が欠かせない。隣人は独居の高齢女性。地区一帯が停電しているためか、民生委員による訪問もないようだ。女性は冷房のない部屋で水を飲まずに過ごしているといい、生活用水とミネラルウオーターの配達を引き受けた。

 停電3日目の6日は出社したが、保育所も停電しており、早めの迎えを依頼されてとんぼ返り。夕方にようやく復旧した。温かい離乳食を用意し、モグモグ食べる長男の満足そうな顔を見て、ひと息つけた。

 大きな災害を経験したことがなかったため、混乱の連続だった。停電で傷んだ冷蔵庫の食材を片付けながら「備えは最大の減災」を心に刻んだ。(久保田麻依子)

薄暗い部屋で夕飯を食べる長男。不安に思ったのか、ほとんど残してしまった=伊丹市内
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時計2018/9/7 22:16
神戸新聞NEXT
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