「まじでつぶれる5日前」。そんな深刻な経営状況をあけすけに発信し、神戸新聞の紙面をにぎわせてきた兵庫県香美町村岡区長瀬の道の駅「あゆの里矢田川」が、2017年度の決算をまとめた。昨年12月に駅長に就任した阿瀬大典さん(40)の奮闘もあって、無事、危機的状況を脱したことが数字でも裏付けられ…、え、80万円の赤字ですか?
 
 事実関係を整理してみよう。阿瀬さんが駅長を引き継いだ時点で、銀行口座に残る同道の駅の運転資金は15万円だった。1月に経費の支払いを済ませると、残金はわずか1万円。ま、まじでつぶれる−。ネットを主戦場とする阿瀬さんの戦いはここから始まった。

 駐車場の雪で山を築いた「矢田川スノーパーク」、某有名キャラに酷似していることで話題を呼んだ萌えキャラ「矢田川あゆか」の考案、「RVパーク」の開業など、なりふり構わず独自の企画を打ち出して存在感を発揮。「日本一ダメな道の駅」として、テレビにも取り上げられた。

 これだけ名前が売れれば、客足が伸びない理由がないだろう。「前年に比べると、売り上げは確かに増えましたよ」とうなずく阿瀬さん。特に決算最終月の3月は、前年の2倍近い売り上げを記録するなど、その勢いは確かに出ていたはず。「でも焼け石に水でしたね」

 1999年に完成した同道の駅は、最盛期の2004年度には5千万円の売り上げがあったという。対して、17年度は1117万円余り。16年度の1290万円さえも下回った。「後半4カ月、僕が頑張ったからこの程度で済んだ、と言えなくもないけど、黒字になるにはせめて1500万円くらいないと厳しい」と、阿瀬さんはいつになくシリアスに語る。

 とはいえ今年4月以降の来客数は、毎月、前年の2〜3倍を維持。阿瀬さんも「もう5日後につぶれるということはない」と断言する。決算こそ赤字だったが、口座残高にも多少の余裕が生まれているという。

 駅長就任からもうすぐ1年。阿瀬さんは「あまり表沙汰にはなっていないけど、これまで自転車操業でいい加減にやってきたことが裏目に出始めた」と聞いてもいないことを告白し、「今は反省の時期。2年目は丁寧に仕事をしていく所存です」と殊勝に語る。

 人が変わったようですけど、阿瀬さん、あなた大丈夫ですか。「まあ、悪ふざけは続けますけど」。あ、そうですか。

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 阿瀬さんと私の“茶番劇”も長くなりました。来年は黒字決算を目指して頑張ってほしいものです。


「すみません、赤字でした!」と決算の結果を公表する阿瀬大典さん=道の駅「あゆの里矢田川」
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神戸新聞NEXT 2018/9/26 05:30
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