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     r ! ヽ._   _, -' .r'::::::::::::;!:::ヽ、     アルトゥール=ショーペンハウエル 1788ダンツィヒ〜1860フランクフルト
    /::::::´:〉- 二  `/::::::::::::::/::::::::::::::ヽ、
国家や法や法律が宗教およびその信条の助けをかりないと維持されえないし、司法と警察は
法の秩序を貫徹するために、そのやむをえない補充として宗教を必要とする、と考えるのはまちがって
いる。たとえ百ぺんくりかえされたって、まちがいはまちがいだ。というのは、古代人、とりわけギリ
シア人が、れっきとした事実上の反証をわれわれに提供してくれているからだ。つまり、こんにちわれ
われが宗教と解しているものは、ギリシア人にはまったくなかったものだ。彼らは聖典なんか持ってい
なかったし、若いときからたたきこまれ、すべての人に押しつけられるような教義なんかは彼らのあず
かり知らぬところだった。―同様に、坊主ふぜいが道徳のお説教をしたり、ひとさまの品行を気にか
けたり、一般に庶民のなすこと、なさぬことに頭をつっこむなどということは、まったくなかったこと
なんだ! それどころか神官の任務は神殿の儀式、祈祷、歌唱、供物、行列、清祓式などに限られ、そ
れもひとりひとりの個人の道徳的向上などという大それたことを目的とするものでは、さらさらなかっ
た。当時のいわゆる宗教は、ごく局限されたものだ。つまり、ほうぼうの都市国家に「偉大な氏族の神
神」の、ここではこの神、あそこではあの神を祭る神殿があって、ここでその筋の命令で上述の礼拝が
行われただけなのだ。だから、この宗教的儀式は、つまるところ警察事項だったわけだ。この儀式で
働く職員以外は、だれひとり、参列の義務もなかったし、その神を信じるように強いられることはな
かった。