八日深夜、羽田発パリ行きのエールフランス機が羽田空港を離陸後、騒音を防ぐために日本政府が決めた規則に違反して七キロ以上も北上し、皇居(東京都千代田区)の真上など都心を低空飛行したことが国土交通省への取材で分かった。「極めて異例」と専門家は指摘しており、同省が原因を調べている。

 国交省東京空港事務所によると、この航空機は八日午後十一時十三分に羽田空港を飛び立ったエールフランス293便(ボーイング777)。C滑走路を北向きに離陸した。同省の管制データによると、同十四分に京急新馬場駅(品川区)上空七百二十メートルを通過。向きをやや東に変え、同十五分に皇居内の江戸城本丸跡上空千三百八十メートルを通り、大きく旋回して同十六分に江戸川区清新町の荒川上空を通って東京湾へ出た。同省首都圏空港課の担当者は「都心上空をこれほど低空で飛ぶのはあり得ない」と話す。

 日本政府が各航空会社に飛行ルールを知らせる規則「航空路誌」は羽田空港の場合、住宅地域への騒音を軽減するため、離陸後二百十メートルまで上昇したら「できるだけ早く(東へ)旋回を開始する」よう定めている。同機は通常曲がり始める空港対岸でも旋回せず、管制官が新馬場駅手前で旋回を指示したという。

 日本航空でパイロットを四十年務めた航空評論家の小林宏之氏は「離陸時にここまで都心上空に入る例は前代未聞。乗務員が規則を見落としたか、離陸直後に乗務員の注意をそぐ事態が起きた可能性がある」と指摘する。航空評論家の青木謙知氏は「自動操縦では考えられない事態。手動操縦で誤ったか、機材のトラブルの可能性もある」とみる。

 同機は日本時間の九日にパリに到着し、国交省はエ社に経緯の確認を求めている。本紙はエ社に取材を申し込んだが、十日までに回答はなかった。

 今回の航路のほぼ直下の八潮団地(品川区)に住む室江昇さん(69)は「規則通りにすぐ海へ出るべきだ。国交省にも指導の意識を強く持ってほしい」と話している。 (皆川剛)

2018年10月11日 朝刊
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