今年、平昌冬季五輪フィギュアスケート女子の金メダリスト、アリーナ・ザギトワ選手にプレゼントされるなど、世界を舞台に活躍する秋田犬(あきたいぬ)。全身フワフワの柔らかい毛に包まれた、愛嬌(あいきょう)たっぷりの大型犬は、いまや秋田県の観光に欠かせない存在だ。休日ともなると、秋田犬見たさに多くの観光客がやってくる。ただし、光が当たれば影も生まれる。肝心の秋田犬が展示のストレスからか体調不良になるケースが出るなど、人気ゆえの課題も浮上し、関係者は対応策を模索している。【森口沙織】

秋田の顔、圧倒的な存在感
 秋田支局の記者として、秋田市に赴任して約2年半。この1、2年は秋田犬人気が県内でも急上昇している。駅などに張られる県の観光PRポスターを見ても、「巨大な包丁を手にした男鹿のナマハゲに寄り添う秋田犬」だったり、「黄金色に染まった田んぼの前で秋田犬がたたずんでいる」ものなど、複数のパターンを目にした。

 秋田の玄関口、JR秋田駅の改札近くには巨大な「秋田犬バルーン」も登場、スマートフォンやカメラで写真に収める人が多く見られる。秋田犬はもはや県の顔、秋田の主役、と言っても過言ではない。

県の観光振興課によると、観光客が秋田犬に会える県内の施設は昨年の5カ所から、2倍以上増えて12カ所になった。7月にオープンした道の駅「オガーレ」(男鹿市)でも、展示に向けた準備が進められており、まだまだ増えそうなのだ。

 秋田市の観光振興課によると、市中心部にある展示施設「秋田犬ふれあい処 in 千秋公園」と「秋田犬ステーション」には、これまでに7万人以上が訪れた。ふれあい処は11月4日で今年の営業を終えたが、好評ぶりを受けて来年も展示を続ける方針という。

 秋田犬発祥の地とされる秋田県大館市にも6カ所の展示施設があるが、同市観光課の担当者は「肌感覚だが、秋田犬目当ての観光客は確実に増えている」と手応えを口にする。

体調崩した秋田犬、ニュースに
 ただし、「光と影」はやはり表裏一体だ。

 8月下旬、大館市にある秋田犬観光スポット「秋田犬ふれあい処」の「飛鳥(あすか)」(雌、2歳、虎毛)が、同月中旬から腹をくだすようになったとして「9月1日からしばらく休養する」とのニュースが報じられた。施設を運営する大館市の福原淳嗣市長が8月31日の定例記者会見で「多くの人と触れ合い、ストレスがたまったのでは?」と分析したのが、「影」を考える発端となった。

 大館市は獣医に飛鳥のチェックを依頼。ウイルス検査なども行ったが、体調不良の原因は特定できず、しばらく休養させた。結果、飛鳥は体調を取り戻したという。飛鳥は話せないため真相は不明だが、「大勢の観光客に触られるなどしてストレスでダウンした」との見方が、秋田県内では「通説」となっている。

 秋田犬に詳しい、公益社団法人「秋田犬保存会」(本部・大館市)によると、そもそも秋田犬は飼い主への忠誠心が強い半面、見知らぬ人には警戒心を抱きがちな性格。保存会の関係者は「犬の個性もあると思うが、知らない人から触られ続けるのは、秋田犬にはストレスとなっている可能性がある」と指摘する。

犬に配慮した展示のあり方模索

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https://mainichi.jp/articles/20181110/mog/00m/040/006000c
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