https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181111-00010002-wired-sci

イノヴェイターとして脂ののった時期にWinny事件で逮捕され、紆余曲折を経て無罪を勝ち取ったものの、
あっという間に他界した不世出の天才。金子勇がたどった無念の生涯は、「出る杭が打たれる」の典型といえるだろう。

その社会的損失の大きさを伝えるべく、2018年現在、いろんな立場の人間が表現方法を模索している。
なかでもユニークなのが、事件の映画化を目論む古橋智史だ。

「出る杭が打たれない。そういう国にしたいと、本気で考えているんですよね」

古橋はIT系ヴェンチャー企業「スマートキャンプ」を率いる現役の経営者。金子からみて18歳年下の、若きフォロワーだ。
彼は仕事の合間にクラウドファンディングで資金を募り、スタッフ集めや脚本づくりに奔走しつつ、金子の知人と会う機会をつくり、
その生き様について教えを乞うている。

そんな古橋に手を差し伸べるのは、株式会社Skeed。あのWinnyにおいて問題となった部分を改良・商用化すべく、
生前の金子とその仲間が創業したスタートアップだ。代表取締役の明石昌也は、金子の右腕として辣腕を振るった経験をもつ。

「ぜひ金子さんのことを、多くの人に知ってほしい。彼は発想の天才で、Winnyは彼の生んだプロダクトのひとつに過ぎない。
なのに、あの事件が、彼から貴重な7年間を奪った。最先端にいる研究者の前途を潰したんです」

わたしたち日本人にとって、それは間違いなく悲劇だった。

7年間を覆ったWinnyという「影」

2002年に発表されるや否や爆発的に普及したファイル共有ソフトWinny1(Winny version1)は、データ転送における優れた
アルゴリズムに加え、高い「匿名性」を実現していた。それゆえ、一部のユーザーが違法に入手した映画や音楽などの商用データ、
果てはコンピューターウイルスまでWinnyにアップロードし、世界中に拡散するという事件が頻発。その結果、Winny1の開発者である
金子までが(厳密にはWinny2を開発したかどで)「著作権法違反幇助」の嫌疑をかけられ、2004年に逮捕、起訴される。

ツールを悪用した人物ではなく、ツールをつくったプログラマーに「悪意があった」とするのは過剰かつ不当な対応だ。
そもそもWinny自体は合法なファイルも共有できる。いまでいえば、YouTubeに著作権違反の動画がアップされるたびに、
YouTubeの経営者が投獄されるようなものである。

現在では、動画や音楽などの配信サーヴィスに違法なデータがアップロードされた場合、著作権者が申し立てれば運営側が削除する、
という対応が一般的だ。ところが当時のWinnyは、問題の起きたファイルを削除する機能を搭載していなかった。
金子はWinnyにその機能を付加する方法を考えついていたが、京都府警に拘留されてしまった結果、開発を継続できなくなる
(その後、Winnyを引き継いだSkeed社製品に搭載)。

世界を変えるほどの新しい技術は、未知へのチャレンジ精神が生み出すものだ。しかし、それが誰にどう使われるか、
何がどう課題となるのかは、世に問うてみなければわからない。本質的に、研究とは「守られるべき存在」であり、
技術とは「改良し続けるべきもの」だ。しかし、当時の警察にはそういった深慮が欠けていた。

理解できず、だから疎んじる。それは最悪だ、と古橋は憤る。

「だってそうでしょ? Winnyのような攻めたプロダクトをつくろうとするイノヴェイターが、萎縮してしまう結果につながりかねないんですよ」

金子の盟友だった明石は、その温厚な人柄を懐かしむ。私利私欲にほだされず、ものごとに動じない。他人の悪意に無頓着で、
細かいことはあまり気にせず、そして子どものようにプログラミングに熱中した男。

「裁判の費用を有志で募ったのですが、3週間で1,600万円が集まりました。いまでいうクラウドファンディングですよ。
金子さんが、みんなに愛されていた証拠です」

地裁では有罪判決が下り、150万円の罰金刑を言い渡された金子は、控訴を決意する。それも「らしい」決断だった。

「金子さん自身は争いごとが大嫌い。そのまま罰金刑を受け入れてもいい、と思っていた。でもきっと、後に続く人たちが困る。
それで闘う決意をしたんです」


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1が建った時刻:2018/11/12(月) 05:22:37.62