一般的な10トントラックの後輪タイヤ。2本の間の隙間は10センチほどしかない。破裂したタイヤは2本の間に石が挟まっていた
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■強度低い側面で傷拡大か

 【平取】日高管内平取町の自動車整備工場で先月、大型トラックのタイヤが突然破裂し、風圧で吹き飛ばされた男性社長(60)が死亡した。2本の左後輪タイヤの間に挟まった石を取り除き、点検しようとした矢先の出来事。破裂事故は全国で相次ぐ。大型タイヤに潜む危険性を探った。

■2メートル吹き飛ぶ

 捜査関係者らによると、事故が起きたのは10月22日午後6時半すぎ。日が暮れたころ、10トントラックの運転手が「後輪に石が挟まった」と自動車整備業振内(ふれない)自工に駆け込んだ。既に従業員は帰宅後で、社長と運転手が作業に当たった。

 後輪は、直径約1メートルのタイヤが左右2本ずつ。左側の2本のタイヤの間にある約10センチの隙間に、ラグビーボールより一回り小さい石が挟まった。運転手が専用の器具で除去後、社長がのぞき込んだ瞬間、内側のタイヤが破裂した。

 整備工場の近くに住む男性は「車のドアを思いっきり閉めたような大きな音だった」と語る。約10分後に外側のタイヤも破裂した。

 大型タイヤは重さが約100キロもある。社長は約2メートル吹き飛ばされた衝撃で、全身を強く打ち、服がボロボロに破れた。社長とともに同社を経営してきた双子の兄(60)は取材に「気持ちの整理がつかない」と言葉少なだった。
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■整備中にタイヤが破裂する事故は年間30件前後

 タイヤメーカーでつくる日本自動車タイヤ協会(東京)によると、パンクの修理や空気の充填(じゅうてん)など整備中にタイヤが破裂する事故は、2015〜17年に全国で毎年30件前後、死亡事故も年1件ずつ発生している。

 トラック用のタイヤは1本当たり最大3・5トンの重量を支えるため、大気圧の約9倍、乗用車の約3倍に圧縮した空気を充填する。これら外部からの重量と内圧に耐えられるよう、内部にスチール製のワイヤを網目状に張り巡らし、形を整えている。

 ところが、石が挟まるなど無理な力がかかった状態で走行すると、タイヤがたわんで変形し、負荷がかかって細かな亀裂ができる。

 今回の事故でも挟まった石に黒いタイヤ痕があり、タイヤが強い力で変形した可能性がある。大手タイヤメーカーの広報担当者は一般論として「タイヤの側面は接地面に比べて強度が低く、変形すると亀裂が徐々に広がり、破裂につながる恐れがある」と指摘する。

 タイヤの損傷は、外から分かりにくく、プロでも瞬時に判断するのは難しい。

11/13(火) 11:20
北海道新聞
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