先生のボーナス、子どもの成績次第?
2018年11月15日 17時48分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181115/k10011709961000.html?utm_int=netnewsup_contents_list-items_002

子どもたちの成績で、学校の先生の評価やボーナスの額が決まるとしたら、皆さんはどう思いますか?学校は勉強を教える場なのだから当然?それとも、学力は先生の教え方だけで決まるわけではないのだから、理不尽な話でしょうか?「全国学力テスト」の結果が、2年連続、全国20の政令指定都市の中で最下位だった大阪市。そこで、市長が打ち出したのは「教員にも成果主義」、テストの結果を教員の評価に反映させようというのです。この方針をめぐり、大阪では大きな議論が巻き起こっています。(大阪放送局記者 竹田恭子)

それは突然、やってきた
「抜本的な学校大改革ぐらいのことをしないと、最下位からは抜け出せない。学力を向上させるという意識を学校現場や教育委員会が、もっと強烈に持たなきゃいけない。結果に対して責任を負う制度に変えていくべきだ」

うだるような蒸し暑さが続いていた8月2日。大阪市役所5階で記者会見に臨んだ吉村洋文市長は、険しい表情で、こう、切り出しました。

ことしの全国学力テストで、大阪市の小中学校の結果が、2年連続、政令指定都市で最下位という結果になったことを受け、今後は、学校ごとに成績の数値目標を定め、達成したかどうかを教員の人事評価やボーナスに反映させようというのです。

相次ぐ“てこ入れ”も…
全国学力テストは、子どもたちの学力を把握して、授業の改善につなげることなどを目的に、文部科学省が平成19年度から行っているものです。教科は、国語と算数・数学、それに3年に1度、理科のテストも行われます。

大阪市では当初から平均正答率が全国平均を下回るなど学力の底上げが課題となってきました。橋下徹前市長の時には、学校の状況を保護者に知ってもらう必要があるとして、市の教育委員会が各学校に対して、学力テストの学校別の結果を原則として公表するよう義務づけ、議論を呼びました。
後を継いだ吉村市長も、学力を向上させる取り組みをやつぎばやに打ち出してきました。例えば、今年度新たに始まったのは、国語と算数・数学で教員たちの「授業力」を改善する取り組みです。
ベテランの先生が、小中80のモデル校を回って、若手教員に授業の進め方を指導したり研修を行ったりするもので、2年間実施して効果を検証する予定です。

一方、大阪市では経済的に厳しい家庭も少なくありません。生活保護を受けている人の割合は、去年3月の時点で5.32%で、全国平均の1.69%を大きく上回っています。

大阪市がおととし行った調査では、経済状況が厳しい家庭の子どもほど、学習の理解度が低くなり、授業以外の学習時間や読書時間も少なくなる傾向が明らかになりました。大阪市では、こうした子どもたちを支援しようと、民間の塾代を助成したり、放課後に補習したりする取り組みも行ってきました。それでも振るわなかった今回のテスト結果に、吉村市長は、さらに踏み込んだ措置をとろうというのです。

新方針は
記者会見から1か月余りたった9月14日。吉村市長をはじめ、教育長や教育委員などが出席して会議が開かれました。この場で決まった方針は、大きく2つ。

1つが、教員の評価の基準を、児童・生徒がテストで何点とったかではなく、前の年度からどれだけ点数を伸ばしたかに置くこと。もう1つが、そのための物差しは、「全国学力テスト」ではなく、大阪市と大阪府が小学3年生から中学3年生までを対象に毎年行っている独自テストの結果にすることです。「全国学力テスト」は、対象が小学6年生と中学3年生に限られているため、一人一人の子どもの学力が前の年からどれだけ伸びたかを把握するには、「大阪の独自テスト」のほうが適切だというのが理由です。

折しも大阪市では、昨年度から教員の人事や給与についての権限が、都道府県から政令指定都市に移されたことを受けて、制度の見直しを進めています。

吉村市長は、従来の評価制度は事実上、横並びだとして、「頑張っている教員がもっと評価される制度」にすることに強い意欲を示してきました。その「頑張っているかどうか」を判断するうえで、子どもの成績を上げたかどうかが重視されることになったのです。

大阪市では、新しい評価制度を来年度、試験的に導入したうえで、再来年度から本格実施して、教員のボーナスなどに反映させていくとしています。

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