たとえばゴビレゴンドウは「社会性」を有する。
育児に参加しているらしいオバチャン等。



島の娘会議レポート(1)
http://twilog.org/shimanomusume/date-101213
全話者の中で唯一私だけが死んだ(というか殺した)クジラの話しだなあ…、
と思っていたら、粕谷俊雄さんは、水揚げされたコビレゴンドウから試料を集めて、
彼らの生態・生活史に迫るという、日本の研究者ならではの「破壊的調査手法」で
どこまでわかったかを披露。
試料として漁師から分けてもらったのは、歯、睾丸、卵巣、子宮、乳腺、胃の内容物など。
これらで年齢、妊娠、授乳期間などがわかり、コビレゴンドウが母系社会であり、
雌は平均62歳、雄は45歳。雌は9歳くらいで成熟するけど安定して妊娠するように
なるのは16歳くらいからで、36歳くらいで終わるけど老後は長く、その間も授乳
してるしだいたい「精子を持っている」そうです。
精子は3日くらいの寿命だそうで、つまりボノボみたいにセックスを繁殖のため
だけではなくコミュニケーションの一つとしていてかなり頻繁に、してるって
ことがわかった、と。また、育児にもずっと関わっていると。
あ、雄雌を間違えた。雄は早ければ8歳くらいで精子ができるが睾丸が出来上がって
大人の雄といえるのは16歳から。
雌は7、8歳で初めて妊娠し一生に5回くらい妊娠するが、20歳過ぎると妊娠しにくく、
36歳以上では妊娠した個体は見つからなかった。です。多分(メモが…)
あと、妊娠しなくなった後とか発情期以外の雌の「精子を持っている割合」は3割だった。
(走り書き読みにくい…誰が書いたんだ)
へー! という内容なんですが、水揚げされたコビレゴンドウから群れの規模や
雄雌の比率、年齢構成などがわかってる、ってことは、群れを一網打尽にしている!
ただ、この破壊的調査手法の限界で、誰に乳を与えていたのか、
誰とセックスしていたのか、そういうことはわからない。

しかも、粕谷さんは日本の鯨類研究者の中では例外的に早くから漁法が問題だと
声を上げてきた人です。ただしその警告は長い間表に出てこなかった。
その結果、静岡県のスジイルカ漁は衰退し、事実上消滅したといって良いでしょう

一網打尽でないにせよ、妊娠中の雌であれ、育児に参加しているらしいオバチャン
だってそうだし、生殖能力がある複数の雄だって、どれかを捕れば、群れには影響がでる。
それだけじゃなくて、文化を「学習によって集団の中に保持されている情報あるいは
行動様式」と定義するならば、これが、予測困難な海洋環境に群れを適応させたり、
その適応力を高く維持する効果があるだろうと。
しかしその情報を次の世代に教える役回りのオバチャンを捕れば、文化の継承は途絶えます。
いろんな意味で群れは生きていく力を失う。
そのことを破壊的調査方法しか選択の余地がなかった時代に突き止め、自分の
フィールドを否定するような結論を世に出そうとして苦労した研究者です。

ちなみにコビレゴンドウって、太地でも捕ってるマゴンドウの標準和名です。
マゴンドウは南方型の呼称。
その昔、「もし将来的に地域的な亜種ではなく別種とわかったときに標準和名
として採用できるように」残したそうです。

このシンポジウム、そういうわけでのっけからすごかった。粕谷先生の講演はしばしば
拝聴するのですが、今回の内容は初めて聞く内容だったし、
手法の説明も「文化」の定義もかなり重く受け止めてきました。
今日はこれで終わりにしますが、続きもやります。来れなかった人、お待ち下さい。