2018年12月10日21時36分
 辞任を表明した官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)の社外取締役5人は10日、相次いで経済産業省を批判した。このうち、星岳雄・米スタンフォード大教授は「JICがゾンビ企業の救済機関になろうとしているときに、私が社外取締役にとどまる理由はない」との見解を示した。

 JICは民間出身の9人全員が辞任の意向を表明し、うち社外の立場から運営を監視する立場にある5人がそれぞれコメントを発表した。ゾンビ企業は、本来なら市場から淘汰(とうた)されるべきなのに政府などの支援によって存続する企業のことで、星氏はこの研究で知られる。

取締役会議長の坂根正弘・コマツ相談役は「人材確保と意思決定スピードが勝負を決める米国社会で成功を期待することは難しい」として、経産省のやり方は有力投資先である米国などで通用しないとの考えを表明。企業再生に詳しい冨山和彦・経営共創基盤代表は「当初の理念であるグローバルトップレベルの政府系リスクキャピタル投資機関の実現は非常に難しくなった」としている。

 保田彩子・米カリフォルニア大教授は「(政府関与の)リスクは機関投資家を敬遠させ、JICの信用力を致命的に落とす」と警告。和仁亮裕・弁護士は、経産省の報酬案撤回について「国際的にも、日本国はいったん有効に成立した契約の合意を平気で否定する国だと捉えられても仕方ないと考えられる」と懸念を示した。

https://www.jiji.com/sp/article?k=2018121000752&;g=eco