最後まで生きていたのはにいなちゃんとされる。
泰子さんの体内から流れ出てゼラチン状に凝固した血の海の中で、正座したような恰好のまま、うつぶせで死亡していた。
にいなちゃんの死因は『後頭部刺創による頚髄損傷』となっているが、解剖所見では頭蓋骨に硬膜下出血、外傷性くも膜下出血の跡があること、上顎左から1本目と下顎右から3本目の歯がそれぞれ欠損していたことが記されていた。
硬膜、くも膜下出血は生存中でなければ、血種が鮮明に現れない。
それゆえに、これらの痕跡はまだ生存中、犯人から逃れようとしたにいなちゃんが殴打されるなどして歯を折られたことを物語っていた。
ロフト内の床やベッドの隙間からも、にいなちゃんのものとみられるO型の血液が歯根部に付着した小さな歯が2本、発見され、周囲からは、その歯が砕け散ったとみられる破片が採取されていた。
泰子さんの傍らで意識朦朧となっていたにいなちゃんの首の後ろから洋包丁で頚髄、甲状腺、食道までを貫き、息の根を止めるという残忍極まりない犯行であった。