米、麦、大豆の優良種子の安定供給を都道府県に義務付けた「主要農作物種子法(種子法)」が昨年四月に廃止されたのを受け、県は「種子条例」を制定する方針を固めた。県内での種子の安定供給などに、県が引き続き責任を持つことを明確にする。二月定例県議会(二月十三日開会)に条例案を提案し、四月一日の施行を目指す。

同様の種子条例は埼玉、新潟、兵庫、山形、富山の五県で制定。北海道や岐阜県、宮崎県などでも条例化の準備が進んでいる。

福井県は長年、種子法を根拠に県内での水稲をはじめとする種子づくりを進めてきた。県は独自開発した「いちほまれ」「コシヒカリ」「ハナエチゼン」など米だけで十四件を奨励品種に指定。県農業試験場でその品種を増殖・維持する元となる「原原種」や「原種」を生産し、品質がしっかりとした種子が農家まで届く仕組みを支えてきた。

十八日に県が公表した種子条例の骨子案では、県が引き続き「原種と原原種の生産を行う」と明記。県の責務として「種子の安定的な生産」「優良な品種の開発」を担うとした。

福井県は種子法廃止と同時に昨年四月、種子の供給を続けるため「要領」をつくった。しかし、県福井米戦略課によると、生産現場では「種子の供給を今後県がやめ、民間中心に移れば種子価格が高くなる」との不安の声が根強くあった。県は種子供給から撤退することはないことを鮮明にするため、条例の制定が必要と判断した。県議会からも条例制定を求める声が上がっていた。

同課の担当者は「良質米づくりのためには種からこだわり、県が優良な種子を提供し続けないといけない」と説明する。県は二十日から二月四日まで県民からの意見を募り、条例案をまとめる方針。(尾嶋隆宏)

2019年1月19日
中日新聞
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