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アメリカがINF全廃条約破棄へ ポイントは?
2019年2月2日 6時41分

アメリカのポンペイオ国務長官は1日、INF=中距離核ミサイル全廃条約の破棄をロシアに正式に通告すると発表しました。なぜこのニュースが大事なのか、ポイントをまとめます。

中距離核ミサイル全廃条約とは

射程が500キロから5500キロの地上発射型の弾道ミサイルと巡航ミサイルの保有と製造、発射実験などを禁止する内容で、失効期限はありません。

INF=中距離核ミサイル全廃条約が調印されたのは、32年前の1987年のことです。核兵器をめぐって、アメリカと旧ソビエトが激しくせめぎ合うなか、7年にわたる断続的な協議の結果、調印にこぎつけました。

アメリカと旧ソビエトはこれによって、合わせて2600基以上の核ミサイルを廃棄し、核軍縮の大きな流れをつくりました。

超大国が初めて特定の核兵器の全廃で合意したこの条約は、東西冷戦の終結につながる緊張緩和をもたらしたとして、歴史的に高く評価されています。

アメリカが条約を破棄する理由は

アメリカの判断の背景には大きく3つの理由があります。

まず、ロシアの核兵器に対する強い危機感です。アメリカは去年、策定した核戦略で、ロシアのINF全廃条約違反を主張し、是正を迫るために、外交、経済、軍事の分野で対抗措置をとると警告していました。アメリカはロシアが局地戦のために開発した「戦術核」を大幅に増強し、限定的な核攻撃も辞さない構えを見せていると指摘。対抗措置として「低出力核」と呼ばれる威力を抑えた核弾頭を搭載した巡航ミサイルの開発を目指す方針を示しています。

次に、核軍縮の合意が有名無実化することへの懸念です。条約違反を放置すれば実効性が損なわれ、将来の軍備管理の在り方にも悪影響を与えると懸念を示しています。

3つめが核戦力を強化する中国の存在です。INF全廃条約がロシアとの2国間条約のため、ほかの核保有国の中距離核ミサイルの保有や開発を制限できないことも問題視しているのです。条約に縛られない中国は、中距離ミサイル能力を急速に向上させていて、アメリカとしては国際的な議論を喚起し、中国やほかの核保有国を巻き込んだ新たな軍備管理の枠組みづくりにつなげたいねらいもあるとみられます。
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