相談した先輩に「だまされた」 牛刀を手にした20歳


 夏の深夜の警察署前で、その殺人事件は起きた。刃渡り約18・5センチの
牛刀で刺された被害者の傷は25カ所ほど。肺や心臓に達するものもあった。
被害者と被告は、中学時代からの先輩と後輩で、事件当時は会社の同僚。
何が20歳の被告にそこまでさせたのか。

 殺人と銃刀法違反の罪に問われたのは、元トラック運転手の小川雄也被告
=群馬県千代田町新福寺=。裁判員裁判が1月31日、前橋地裁であり、
鈴木秀行裁判長は懲役13年(求刑懲役16年)の判決を言い渡した。

 判決によると、被告は昨年6月20日午後10時50分ごろ、同県大泉町の
ドラッグストア駐車場で千代田町の男性(当時20)の腹や背中を殺意を
持って牛刀で複数回突き刺し、殺害した。

 現場は大泉署と道路を挟んだ目の前。「話したいことがある」と被告に
呼び出された男性が友人を連れて現場に現れると、被告はズボンに忍ばせて
いた牛刀を男性に向けた。走って逃げた男性は約40メートル先で転び、
被告に襲われた。友人が署に助けを求め、駆けつけた警察官が拳銃を構えて
「やめないと撃つぞ」と警告するまで刃物を振り下ろし続けた。
一部始終は署の防犯カメラ映像に映り、証拠としても提出された。

 公判で明かされた事件の発端は、昨年5月23日にさかのぼる。
勤務先の先輩2人に誘われ、被告は2人を車に乗せて館林市内の居酒屋に
向かった。1時間ほど食事と共にビールや梅酒を飲んだ帰途、信号待ちで
停車中に軽く追突された。被害者のはずが、相手の運転手に飲酒運転が
知られてしまい、立場が逆転した。「金を払わなければ警察を呼ぶ」と
言われ、示談金150万円を要求された。

 被告は「免許がなくなれば、トラックの仕事ができなくなる」と焦った。
約3カ月前、幼いころから憧れた父親と同じトラック運転手になった
ばかりだった。

 金がなかった被告は相手の運転…(以下有料会員限定記事)

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朝日新聞・有料会員限定記事 (森岡航平 2019年2月3日12時00分)
https://www.asahi.com/articles/ASM1Z6WC0M1ZUHNB00P.html?iref=comtop_8_01

現場に供えられた花
=2018年6月22日午前8時29分、群馬県大泉町東小泉1丁目
https://www.asahicom.jp/articles/images/c_AS20190131005164_comm.jpg