妊娠や出産で国会に出られない女性議員に採決時のインターネット投票を認めるかどうかを巡って、自民党で憲法論争が起きている。「議事は出席議員の過半数で決する」という憲法56条第2項を拡大解釈するかどうかが最大のポイント。推進派は今国会中の制度改正を目指すが、ハードルは高い。

 自民党の三原じゅん子女性局長は15日、議員活動と育児の両立を目指す「超党派ママパパ議員連盟」(会長・野田聖子衆院予算委員長)の会合で、ネット投票に関する論点整理を提示した。衆院法制局が複数の憲法学者に意見を聞いてまとめたもので、三原氏は「憲法学者の賛否は拮抗(きっこう)している」と説明した。

論点整理は「議会への女性参画を促進し、議会制民主主義の深化に資する」とネット投票の意義を強調。憲法上の「出席」に当たるかどうかに関しては「通信技術の発展を踏まえた時代に応じた憲法解釈として成り立ち得る」との見解を示した。対象を妊娠・出産に限ることも「女性固有の事情で表決権(採決の権利)行使に差が生じるのを防ぐ趣旨」と容認した。

 一方、議場への出席は「国会議員は全国民の代表」という憲法43条から導き出される義務だという慎重論も併記した。妊娠・出産に限定することは「合理的理由がなく、なし崩し的に拡大していく懸念がある」という意見も紹介した。

ママパパ議連とは別に、自民党衆院改革プロジェクトチーム(PT)も7日、「議場にいない議員は表決に加わることはできない」という衆院規則を改正する改革案を了承した。メンバーの小泉進次郎厚生労働部会長らは今国会中にも衆院議院運営委員会の小委員会に改革案を提出し、各党に賛同を呼びかける構えだ。

 ただ、自民党には慎重論が根強い。森山裕国対委員長は12日の記者会見で「憲法に出席議員と書かれていることは非常に重い」と表明。公明党幹部も「ネット投票を認めると、議場から離れたところで議論すればいいということになりかねない」と懸念を示す。

 与党関係者は「憲法は解釈するものであり、その点では集団的自衛権の議論と同じだ。それなのに、自民党がこの問題だけは憲法の条文を厳格に当てはめようとしているところが興味深い」と語っている。【田中裕之】

2019年2月15日 21時03分(最終更新 2月15日 21時03分)
https://mainichi.jp/articles/20190215/k00/00m/010/240000c