金沢市文化財保護審議会は十五日、加賀藩前田家ゆかりの屋敷「松風閣」(同市本多町)を、市有形文化財に指定するよう市教委に答申した。近く市教委での議決を経て指定される。今回を含め、市文化財は計二百二十六件になる。

 松風閣は、十二代藩主前田斉広(なりなが)の娘寿々姫(すずひめ)が一八三四年、加賀藩の家老を代々務めた八つの家系「加賀八家」の本多家の、九代当主政和にこし入れした際に建てられた木造平屋の屋敷。寿々姫の兄で十三代藩主斉泰(なりやす)が「広坂御広式(おひろしき)御対面所」として、現在の県立美術館の場所に建てた。

 三回の移築を経て、現在は北陸放送の敷地内に立つ。加賀八家の上屋敷の住宅施設として、市内に現存する唯一の建物で貴重。市文化財保護課の担当者は「取り壊さず移築してでも大切に残した点で、前田家と本多家の強い関係性がうかがえる」と話す。いつから松風閣の名前になったかは不明。室内には、前田家に仕えた彫師、武田友月の作と伝わり、極楽鳥と熱帯植物を立体的に表現した欄間や、滝とワシの絵が描かれた戸など、見事な細工が随所に見られる。天井裏からは、建築した大工の棟梁(とうりょう)の由緒が書かれた板「棟札(むなふだ)」も見つかった。

 屋敷は一般公開されていないが、イベント会場として使うこともある。屋敷は二〇〇三年、国有形文化財に登録。屋敷の東側にある日本庭園「松風閣庭園」は〇八年に市文化財に指定されている。

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(上)12代藩主前田斉広の娘の寿々姫が過ごした松風閣(下)前田家に仕えた彫師の作と伝わる立体的な欄間=いずれも金沢市本多町で
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