歴史学者の直木孝次郎さん
https://www.nikkei.com/content/pic/20190216/96958A9F889DE6E3E1E5EAE7EBE2E3E4E2E0E0E2E3EB9391EA88E2E2-DSXMZO4137857016022019AC8Z01-PB1-1.jpg

 日本古代史研究で指導的役割を果たした大阪市立大名誉教授の直木孝次郎(なおきこうじろう)さんが二日、老衰のため死去した。百歳。神戸市出身。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は長女東野美穂子(とうのみほこ)さん。

 一九四三年、京都帝国大を卒業して海軍に入隊、海軍士官で終戦を迎えた。大阪市立大教授、岡山大教授などを歴任した。

 文献を中心にした律令(りつりょう)国家成立過程の研究で知られ五四年には続日本紀研究会の立ち上げに参加した。極彩色壁画が見つかった奈良県明日香村の高松塚古墳では、被葬者を天武天皇の皇子である忍壁(おさかべ)皇子と早くから推論し注目を浴びた。邪馬台国論争では畿内説の立場で加わるなど幅広く研究し、戦後の古代史研究の指導者的役割を果たした。大阪の河内地方の勢力が初期大和政権を打倒したとする河内政権説を唱えた。

 また、平城宮(奈良市)、難波宮(大阪市)の保存運動も率いたほか、万葉集に詠まれた和歌山市の和歌浦の景観訴訟も支援した。

 万葉集にひかれ、古代を学ぶ傍ら、歌にも親しみ、八七年の歌会始の召人にも選ばれた。

 憲法九条を守り、改憲を阻止しようと結成された「九条の会・おおさか」の発起人にも名を連ねた。八九年に大阪文化賞、二〇〇〇年に和島誠一賞、〇三年に井上靖文化賞を受賞。

 著書に「日本古代国家の構造」「古代河内政権の研究」など。

東京新聞 2019年2月17日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/obituaries/CK2019021702000146.html
日本経済新聞 2019/2/16 21:48 (2019/2/17 1:15更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41378590W9A210C1AC8Z00/