マンション決議 拒めるか…電気契約 全戸で変更
15 時間前
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 同じマンションで暮らすみんなの電気代を安くしようと住民総会で決議したのに、一部の住民が従わないことは許されるのか――。こうした点が争われた民事裁判について、最高裁が5日に判決を言い渡す。集合住宅の多数派と、反対する少数派の住民の意見が対立して深刻なトラブルに発展するケースは相次いでおり、最高裁の判断が注目される。
住民対立 最高裁判断へ
 トラブルが起きたのは、札幌市の5棟建てマンション(全544戸)。2014〜15年に住民総会を開き、マンションの電力供給について、各戸が電力会社と個別に契約を結ぶのではなく、管理組合を通じてマンション全体で「まとめ買い」して電気代を安くする「一括受電サービス」に変更することを4分の3以上の賛成多数で決議した。
 変更には、全戸が電力会社との契約をいったん解除することなどが必要だったが、住民2人が応じず、結局、サービスを導入できなかった。このため、契約変更に賛成した住民1人が、反対住民2人に計約1万円の賠償を求めて提訴した。
 原告側は2月5日、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)で行われた上告審弁論で、「反対住民の妨害により電力を安く買えず、利益を失った」と主張した。一方、被告側は「サービス導入時や定期点検時に停電が予定され、持病への対応や自宅での仕事に不安がある」と反論。「住宅の電気供給は各住民に決める権利があり、総会決議で強制されるものではない」とした。
 裁判では、契約変更を全戸に求めた総会決議の効力が争点となり、1審・札幌地裁と2審・札幌高裁の判決は「住民は総会決議の制約を受ける」として被告2人に計約1万円の賠償を命じた。ただ、書面審理が中心の最高裁で口頭弁論が行われたため、結論が見直される可能性がある。
ネット接続、給排水設備 トラブル相次ぐ
 経済産業省が民間調査会社に委託した調査によると、集合住宅への「一括受電サービス」は2000年代から人気を集め、13年度末時点の導入戸数は30万戸以上と推計される。
 ただ、住民総会での導入決議を巡るトラブルも少なくない。賛成・反対住民の対立がエスカレートし、マンションなどの管理組合が反対住民の部屋の競売を求め裁判所に訴えたり、反対住民が管理組合の理事長に慰謝料を求めて提訴したりするケースもあった。
 こうした紛争は電力供給にとどまらない。NPO法人「全国マンション管理組合連合会」(東京)には、「インターネット接続のマンション一括契約に同意が得られない」「一部住民の反対で給排水設備の更新が進まない」といった相談が寄せられるという。
 同連合会の川上湛永やすひさ
会長は「老朽化が進むマンションが増える中、住民全体の利益が広く認められなければ管理や修繕も進まない」と懸念する。一方、市民団体「マンションコミュニティ研究会」の広田信子代表は「総会決議の拘束力が各戸に及びすぎると暮らしづらい。共有スペースと各戸を区別し、各戸に関することは基本的に強制するべきではない」と話している。