目下、24時間をめぐって「セブン-イレブン(以下、セブン)」の名が取り沙汰されている。3月中旬からは一部店舗で時短営業の実験がはじまるというから、コンビニ業界そのものの在り方を問いかねない大ごとである。一方、こちらもセブンをめぐる大ごと。おなじみ「おにぎり100円セール」が“改悪”されてしまったのでは、というのだ。

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 日本人なら誰でも一度は……というのは大げさだとしても、ひとつ100円になるコンビニのおにぎりセールには、お世話になったことがある人も多いはず。つい先月も、ファミリーマートが2月14〜18日の5日間でセールを実施。160円未満(税込、以下同)の商品が100円に、160円以上のものは150円になっていた。やはりミニストップでも、2月15日から3日間、おにぎりが1個100円になるセールを開催。おにぎりセールは、今やおなじみの光景であるといえる。

 それは、セブンでも同じはずだった。昨年12月1〜4日に行われたセールでは、これまでと同様に、160円未満のおにぎりが100円、160円以上200円未満のものが150円になるという“1個100円”スタイルだった。ところが3月1日から16日まで実施されている今回のセールは、160円未満のおにぎりを2個買うと200円。しかもAM4:00〜AM11:00の間限定という、“朝セブン”枠になったしまったのだ。

 これをセールの“改悪”ではと指摘する声は少なくない。〈いつものおにぎり100円セールに戻せ〉という怒りの声ほか、〈「朝だけ」だってことちゃんと分かりやすく表示しなさいよ〉〈時間指定あるらしく、今買ったら普通の値段とられた〉といった、いつものセールの調子で買ってしまったなんて報告もSNSにはちらほらと……。

 業界ウォッチャーの間でも、セブンがセールの方向を変えてきたことは話題になっているようだ。なにせ、同社は〈均一セールをコンビニで最も早く導入しており、初めてセールを行ったのは2005年1月〉(14年8月10日付日経MJより)というパイオニアだからだ。

「90年代にも、ローソン、ファミリーマートなどが1個100円の低価格おにぎりを売り出していましたが、あくまで“定価100円”の格安おにぎり商品でした。“セール”という形はやはりセブンが初めてで、普段は高いおにぎりが100円で買えるというお得感が、集客効果を生むのです。店側にとっても、ついでにカップみそ汁やお茶を買ってくれたりといった恩恵がありました。店によっては、セール期間中の商品販売数が倍になることもあるといいます」(業界紙記者)

 ではなぜ、セブンは今回“1個100円”ではなく、時間を限った“2個で200円”としたのか――そこには別角度からの消費者アプローチがあるようだ。

キーワードは高齢化

 解説するのは、流通アナリストの渡辺広明氏だ。

「そもそも17年の3月から、セブンは午前の時間帯に力を入れる『朝セブン』を行ってきました。サンドイッチやパンとコーヒーの組み合わせが200円になるキャンペーンです。通常のおにぎり1個100円セールのマンネリもあってから、今回は、朝セブンの対象商品におにぎりを組み入れてみたのでは。そこには、パンとコーヒーでは朝を利用しなかった層も呼び込むことで、『朝はセブンに行く』という習慣を浸透させる狙いもあるはず。“2個”としたのも、1個100円セールでは100円にしかなりかねない1人あたりの単価が、2個200円ならば2個買うわけで、1人あたりの売り上げが上がるわけです。お店にとってもメリットがあります」

 いやいや、1個100円セールの時におにぎりを買うのが1個だけってことはない、2〜3個はいけるでしょう――と思ったあなたは、ずばり、若い。今回のセールが“朝”という点ともかかわってくるのが、客の高齢化だ。

「いまの若い人はあまり朝食を食べないとも聞きますから、朝にセールをやられてもという声はわかります。しかし、いまや4人に1人が65歳以上の時代。コンビニは若者ではなく、シニアのための店になってきているのです。そして高齢の方は、朝が早い。2個200円ならば、散歩がてら買いに来て、朝ご飯にご夫婦でひとつずつ食べていいわけです。シニアをターゲットにするならば、朝の時間というのは大事なんですよ。朝セブンは朝4時から始まっていますが、店としても、朝の出勤時間より前の時間帯はお客が少ないという課題がある。そこに集客する意味でも、今回“おにぎり”を朝にお得な価格で売ることにした意義はあると思いますね」


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