毎日新聞 2019年3月20日 12時20分(最終更新 3月20日 12時45分)

 速度違反取り締まり装置に記録された運転者はどちらなのか――。スピード違反に問われた女性の福岡地裁の裁判で、被告の友人が「運転していたのは私だ」と証言した。一方、検察側は速度違反取り締まり装置が撮影した運転者の顔写真の鑑定結果からも、運転していたのは被告で間違いないと主張。裁判所の判断次第では取り締まり装置の信頼性にも疑問符が付きかねず、25日の判決が注目される。

 道路交通法違反(速度超過)に問われているのは、福岡県内在住の20代の女性。2015年1月、同県福津市の国道3号を乗用車で法定速度(時速60キロ)を35キロ超える時速95キロで走ったとして、17年12月に在宅起訴された。

 福岡県警は国道に設置してある、スピード違反を感知すると自動で車のナンバーと運転者を撮影する速度違反取り締まり装置の記録を基に、被告を特定した。だが、被告は普段この車を使っていることは認めつつ、違反時に運転していたのは自分ではないと捜査段階から一貫してスピード違反を否認。誰が運転していたかは口を閉ざしていた。

 そうした中、今年1月の公判に弁護側証人として出廷した被告の友人が、うそをつけば偽証罪になると裁判官から説明を受けた上で「終電を逃した別の友人を送るため(被告から)車を借りて運転した」と証言。その後は被告も「当時は友人をかばっていた」と述べ、今になって話すことにしたのは「公訴時効(スピード違反は3年)が過ぎ友人が起訴される可能性がなくなったから」という趣旨の説明をした。

 県警の科学捜査研究所による鑑定で、取り締まり装置に記録された運転者の顔写真は「被告と恐らく同じ」という結果が出ていたが、新証言を受け、検察側は改めて鑑定を地裁に請求。警察庁の科学警察研究所が鑑定し、写真は「友人ではない」と結論付けた。

 鑑定結果を踏まえ、検察側は「友人の証言は信用できず、運転していたのは被告だ」と改めて主張。11日の公判で、罰金5万円を求刑した。これに対し、弁護側は「画像は不鮮明で推認力はない」と反論し、無罪判決を求めている。【平川昌範】

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