宇佐神宮(宇佐市)の宮司を代々務めてきた世襲家出身の到津克子(いとうづ・よしこ)さん(50)が、宮司に次ぐ権宮司の地位を免職・解雇されたのは無効だとして、神宮などに地位確認を求めた訴訟の控訴審で、原告の到津さん側が控訴を取り下げたことが19日、関係者への取材で分かった。境内にある到津さんの住居を使用し続けることを認めた一審判決を維持するため。昨年2月の同判決が確定した。

 福岡高裁によると、取り下げは16日付。住居を明け渡すよう求めた神宮側の付帯控訴も同時に失効した。

 控訴審は昨年9月に結審後、高裁で双方による和解協議を続けていた。

 原告側によると、住居は到津家の祭祀(さいし)の場を兼ねた建物。高裁の和解案は建物を8年後に明け渡すことなどが条件だった。到津さんは「明け渡しは事実上、社家の廃絶を意味する。高裁判決でも、居住、祭祀の継続を認められるかどうかリスクがある。断腸の思いで一審判決確定の道を選んだ」とコメントした。

 神宮側の代理人弁護士は「話し合いによる円満解決を目指していただけに残念」と述べた。

 確定した一審大分地裁中津支部判決は、免職・解雇には合理的理由があるとして到津さん側の主張を退ける一方、賃金の一部未払いや到津さんへのパワーハラスメントがあったと判断。神宮側に137万円の支払いを命じた。

 建物については「単なる住居ではなく、到津家の伝統秘儀である儀式や祭礼をする場所」と認定。神宮側の返還請求は理由がないと結論付けた。

大分合同新聞 2019/03/20 03:01
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2019/03/20/JD0057893821