https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201903/sp/0012190332.shtml

新幹線台車亀裂、停車せず運行 司令と保守、判断「相手任せ」
2019/03/28 22:05

2017年12月、JR西日本が破断寸前の亀裂が入った台車で新幹線の運行を続けた問題で、国の運輸安全委員会は28日、調査報告書を公表した。JR西が断続的に異音や異臭を感知しながら、列車を停止させなかったのは、東京の指令員も現場の車両保守担当も判断を相手任せにしていた「相互依存」に原因があると指摘。重大な危険を招いた安全管理体制の改善を求めた。

 報告書によると、博多発東京行き新幹線のぞみは出発直後から、異音や焦げたような異臭の報告が繰り返しあり、指令員が保守担当に岡山駅で乗り込んでの点検を求めた。

 しかし、保守担当は「指令員が判断する」と考え、一方で、指令員は「専門技術者である保守担当から明確な要請がある」と思っていたため、列車を止めて床下点検まではしなかった。
 また、指令員は、保守担当からの「床下点検をやろうか」との打診を聞き逃し、さらに「走行上問題がない感じで大丈夫か」など運行継続に誘導するような言い回しもしていた。

 こうした一連のやりとりについて、異常事態を過小評価し、平静を保とうとする「正常性バイアス」や、運行継続に有利な情報を求める「確証バイアス」が心理的に働き、列車を止められなかった可能性を指摘した。

 一方で、亀裂の原因は、台車を製造した川崎重工業(神戸市中央区)の溶接作業で生じた「割れ」から始まった可能性があると結論付けた。

 報告書では、JR西が問題発生までの約8カ月間、異音申告のあった新幹線に保守担当を乗車点検させた割合がわずか4%で、JR東海の81%と大きな差があることも明らかにされた。

 JR西の平野賀久副社長は同日、報道陣の取材に「多くのお客さまに多大なご迷惑を掛け、おわびする」と陳謝した。
 再発防止策については「迷った時は列車を止めるという決意を現場に発信している。チームとして情報を共有し、結論を出す仕組みが根付いてきている」と述べ、保守担当の拡充などの取り組みにも触れた。田中真治、今福寛子)