毎日新聞 2019年5月13日 09時47分(最終更新 5月13日 09時52分)

 路線見直しと合わせ、運賃値上げに踏み切るJR北海道。取り巻く環境は厳しく、人口減少やマイカー普及という長期的な利用客減少の要因に加え、老朽化した設備の更新などで近年は過去最大の赤字を更新し続ける。先月26日発表の2019年3月期連結決算では過去最大の179億円の最終(当期)損失を計上。19、20年度に国の計412億円の支援を取り付けたが、さらに21〜30年度も国、道、自治体から年280億円程度の財政支援も求めているだけに、自らも「値上げ」で痛みを伴う収益改善に踏み切る必要があった。

 JR北の試算では、値上げ後も利用者数が現状通りなら66億円増収するが、26億円の客離れ分が発生すると見込まれるため、合わせると年40億円程度の増収になる見通し。

 JR各社のうち、経営体力のある本州の3社(JR東日本、西日本、東海)はこれまで消費税増税に伴う値上げしか実施しておらず、体力の弱い3島会社の北海道、四国、九州が1996年に収益改善を目的に値上げに踏み切った。しかし、値上げは客離れももたらす「劇薬」のため、2度の値上げに踏み切るのは北海道のみ。

 さらに、今回の値上げは近距離利用が多い札幌圏を直撃する点もジレンマだ。人口が集中する札幌圏はJR利用率が高く、収益の中心となっているだけに、JR北の想定以上の客離れが進めば深刻な結果となりかねない。

 値上げによる増収は老朽化車両の更新に加え、札幌―新千歳空港間の快速エアポート内での無料の公衆無線LAN「Wi―Fi」導入などに充てる方針。道関係者は「値上げによる打撃を最少に抑える努力が必要だ」として、今後の影響を注視する考えだ。【真貝恒平、土谷純一】

https://mainichi.jp/articles/20190513/k00/00m/040/018000c