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■意外な組み合わせ、樹脂の化石はどうやって海の生物を閉じ込めたのか
 琥珀といえば、樹脂が長い年月をかけて化石化したもの。ところがその中から意外なことに、海の生物アンモナイトが見つかった。
おそらく初めての発見という。中国の古生物学者、ユー・ティンティン氏の研究グループが5月13日付けの学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表した。

 アンモナイトは絶滅した海の軟体動物で、タコやイカの仲間。
陸に上がることのない生物が、陸上でできるはずの琥珀から見つかるのはきわめて異例で、かつて海底だった場所から恐竜が見つかるようなものだ。
「通常、琥珀の中から見つかるのは、地上の昆虫や植物、動物だけです。海の生物が見つかるのは、とても珍しいことです」
と、論文の共著者で、南京地質古生物研究所の古生物学者であるワン・ボー氏は語る。

 研究者たちは、海岸線に生えていた木の樹脂が、砂浜に流れ着いたアンモナイトの殻などを包み込んだのではないかと考えている。
同じ琥珀化石からは、巻き貝やダンゴムシに似た海辺の生物のほか、ダニ、ハエ、甲虫、クモ、寄生バチ、ヤスデ、ゴキブリといった
沿岸の森に暮らす生物が見つかっている。

 米ロサンゼルス自然史博物館の古生物学者であるジャン・ベンデッティ氏(本研究とは無関係)は、
「あり得ないような組み合わせです。美しい白亜紀の海岸をそのまま保存したようなもので、まさに驚きの発見です」と話す。
発見の目玉はやはりアンモナイトだが、この時期のたった一つの化石の中からこれほど多様な生命が見つかることのほうが重要かもしれない。
今回の論文著者の一人で、米インディアナ大学ブルーミントン校の古生物学者で名誉教授でもあるデイビッド・ディルチャー氏は、
「あらゆる生命体が共生していたのです。長い目で見れば、その事実の方が重要かもしれません」と述べている。

■謎が多いアンモナイト
 この研究は、アンモナイトに光を当てた最新の研究成果だ。
アンモナイトは、恐竜の時代に生息していた殻のある軟体動物で、その祖先は4億年以上前に登場し、6600万年ほど前に鳥類を除く恐竜とともに死に絶えた。
しかし、それまでの間に、世界中に多様な種が広がっていた。
現在の軟体動物と同じように、さまざまな深さの海に適応し、直径1センチ程度のものから、2メートルを超える巨大なものまで、さまざまな大きさのアンモナイトが誕生した。
アンモナイトは、魚や海生爬虫類に混じって、白亜紀のサンゴ礁をゆらゆらと泳いでいたはずだ。
「(当時の)浅い海でスキューバダイビングをすれば、まちがいなくアンモナイトを見ることができたでしょう」と、米ドレクセル大学の古生物学者で、
軟体動物の化石に詳しいジョセリン・セッサ氏は語る。

 殻の内部構造から、琥珀の中のアンモナイトはプゾシア(ビヒマイテス)亜属の若い個体であることがわかっている。
ワン氏は、9900万年前の琥珀であることを考えれば、この分類は妥当だという。この亜属は1億年以上前に登場し、少なくとも9300万年前まで生息していた。
だが、長いこと研究されてきたにもかかわらず、アンモナイトにはまだ多くの謎が残されている。
軟組織の一部が保存されている化石がほとんどないため、体を再現するのが難しいこともある。
今回、琥珀の中にアンモナイトの殻が閉じこめられる場合があることがわかったので、研究者たちは、今回以上に珍しい発見があるかもしれないと期待している。
陸に打ち上げられたばかりのアンモナイトが樹脂に閉じこめられ、現代まで保存されているかもしれないのだ。

「まったく、どうしてこんなものができたのでしょうか。今回の論文は、想像もできないような化石が存在しうることを示しています。
とても珍しいことですが、悠久の時間のなかでは、珍しいことはいつも起きているのです」とベンデッティ氏は話す。

■奇跡の化石の発見ルート
 問題の化石は、ミャンマー北部のフーコン渓谷から見つかった。このあたりは琥珀の産地で、2000年以上前から採掘が行われてきた。
ここ10年ほどは、古生物学者にとっての聖地とも言える場所になっており、驚くような化石が発見されたのも今回が初めてではない。
羽毛が生えた恐竜のしっぽや、ひな鳥やヘビが体ごと琥珀に閉じこめられた状態で出土している。


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