袋中菴の住職に就いた賀幡圓恭さん。「尼僧寺院の文化を大事に継承したい」と話す(京都市右京区)
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 住職が住んでいない寺や専任住職のいない寺が全国的に増える中、尼寺も厳しい状況に置かれている。伝統的な尼寺は剃髪(ていはつ)して寺に入り修行を重ねた独身女性が住職となることで維持されてきたが、近年は後継者難に悩む。京都市内では男性僧侶に後を託した寺や別の寺院で修行中の女性を後継者に迎えた寺もあり、模索が続く。

 右京区花園の袋中菴(たいちゅうあん)は1619年に始まった尼僧寺院。太平洋戦争で強制疎開に遭うまでは東山区に広大な伽藍(がらん)を構え、「五条坂の袋中菴」として親しまれてきた。開創から400年の節目を迎えた今年、長い歴史の中で初めて男性僧侶が住職に就任した。

 賀幡圓恭(かばたえんきょう)さん(41)。5月4日の晋山式で正式に19世住職を継いだ。先代住職の圓純さん(92)は血縁関係では伯母になる。もともと圓純さんの弟で圓恭さんの父圓定さん(75)が19世を継ぐ予定で60年ほど前から寺で暮らしてきた。「当時でも尼僧はどんどん減っていて後継者が課題でした。ただ私が寺に入った当時は『男性が継ぐのか』との声もまだあった」と圓定さん。

 圓定さんの努力もあり、時を経るうちに男性住職を受け入れる雰囲気が次第に生まれてきた。だが70歳を超えた頃から「これからの寺は若い世代に託さなければ」と考えるようになったといい、長男の圓恭さんに住職のバトンをつないだ。

 圓恭さんは「開山の袋中上人も男性僧侶だったので、自然な気持ちで継承した」と語る。寺は戦後に移転したため地域との絆がそれほど強くないといった課題がある。一方、尼寺だからこそ受け継がれてきた文化や年中行事も数多く、「400年続いた寺が今後も存続し続けるためには何が必要かを考え続けている」との心情も吐露する。

 かつて尼僧は若い頃から寺に入って教育を受け、僧侶として育てられてきた。その中から次の住職を決める寺もあったが、上京区の徳雲寺は4年前、別の寺から次期住職を迎えた。住職の大平浄念さん(88)は「何人か弟子を育ててきたけれど、縁がなく皆さん帰ってしまわれて」と話す。困っていた時に別の寺で修行する女性僧侶を紹介され、副住職とした。米寿を迎えた大平さんが後継者を得た安心感は大きい。「私の代で途絶えなくて本当によかった」

 市内のある尼僧寺院では後継者がまだ決まっていない。「いい時にいい方が現れるのを待っています」。住職はこう話す一方、尼僧として生きることの難しさも指摘する。「男性ならば家族とともに寺を守る人も多いけれど、私たちの世界はもっと厳しい。今のこの豊かな時代に、髪の毛をそり生涯独身を貫いて生きるのは並大抵の覚悟ではできない」

6/4(火) 17:52配信
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