https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-48522760

ハイヒールの終わりが来たのか
2019年06月6日

リビー・バンクス

2014年1月に故カール・ラガーフェルドは、シャネルのオートクチュール・コレクションを開いた。架空の「カンボン・クラブ」だという舞台設定で、カーラ・デルヴィーンを先頭にモデルたちは巨大階段を次々と流れるように下りた。管弦楽の演奏を背景に、モデルたちはきらきらと光る繊細なニットやツイード、透ける絹の薄布による創作を身にまとっていた。ここまでは、実にオートクチュールそのものだった。しかし、何かがふだんとは違った。何かと言うと、モデルたちの足元だ。(文中敬称略)

シャネルのオートクチュール・ショーでラガーフェルドはモデルたちに、特注のスニーカーを履かせることで、スタイルを完成させた。一足の値段は推定3000ユーロ(現レートで約37万円)、完成に30時間かかるものだった。オートクチュールにスニーカーという組み合わせは当時、大勢を驚かせたものの、大胆な第一歩でもあった。

きらびやかな高級ハイファッションの世界が、スニーカーを温かく受け入れるようになった。オフィスやパーティーの前に急いで履き替える、機能性重視の履物だったスニーカーが、シャネルも認める正真正銘のぜいたく品に格上げされたのだ。

あれから5年たった今、ファッション・スニーカー現象はもはや後戻りできないところまで、到達したようだ。シャネルが第一歩を踏み出して以来、スニーカーはどんどんクレイジーになり、ごつくなり、往々にして値段もどんどん上がり続けた。極悪なまでに派手で奇妙なデザインのものほど、喜ばれる。ファッション検索サイト「Lyst」によると、2018年第4四半期の検索用語トップ10の上位4つは、スニーカー関連だった。ファッション・アイテムとしてのスニーカーの可能性に最初に気づいたのは、ナイキやアディダスといったスポーツ・ブランドだったが、高級ブランドもすぐに可能性に目覚めた。スタイルの上でも、そして商品としても。そして高級ブランドは、人が欲しがるものを作り出すことにかけてはプロだ。
(リンク先に続きあり)

https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/160A1/production/_107237209_p078mlc8.jpg
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