キャッシュレス化反対の声明を発表した京都仏教会の有馬頼底理事長(左端)ら=京都市上京区の相国寺で、矢倉健次撮影
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 「お布施」のキャッシュレス化に対し、京都仏教会(理事長、有馬頼底・臨済宗相国寺派管長)が28日、明確に反対する姿勢を示した。

 政府がキャッシュレス化を推進する中、今春時点では長沢香静(こうじょう)事務局長が「1年かけてキャッシュレス化の長所、短所を検討し、見解をまとめる。最終的には各寺院で判断してもらう」としていたが、急転直下とも思える「ノー」の結論を出したのは「世の中のキャッシュレス化があまりにも急速に進んでいる」ことで対応を迫られたためだ。

 この日、有馬理事長と共に相国寺(京都市上京区)で記者会見した長沢氏は「自らキャッシュレス化をしたいという寺院は聞いたことがないが、現金を持たない参拝者が増えていることなどから業者から勧められ、『どうすればいいのか』との相談が一気に増えた」と述べた。金閣寺、銀閣寺を擁する相国寺派もキャッシュレス化を検討していた。

 しかし、京都仏教会の機関「宗教と社会研究実践センター」でキャッシュレスの仕組みなどを研究するうちに危機感が募ったという。キリスト教徒の桜井国郎センター副所長は間近に迫った問題として「手数料が発生して宗教課税という事態になれば、公権力の介入を招く恐れがある。過去に幾度となく弾圧を経験した宗教者はこうした問題に敏感だ」と強調した。

 「業者はうまいこと言うてくるので、ちょっと考えてほしい。布施の根本の意味を考えたらキャッシュレスはありえない」。有馬理事長は穏やかにほほ笑みながら会見を締めた。【矢倉健次】

毎日新聞 2019年6月29日
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