https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190715-00010000-clc_guard-asia
 オーストラリアに生息しているカモメが抗生物質に耐性を持つ「スーパーバグ(多剤耐性菌)」を保有していることが分かり、
感染症の原因となる菌が鳥から人や家畜、ペットに広がる恐れが高まっている。

 世界保健機関(WHO)とオーストラリア政府によると、世界中で抗菌薬の耐性が「危険な水準」に達しており、健康と食の安全に関する
最大の脅威の一つになっているが、このたび、豪パースのマードック大学研究チームは、国内に生息しているギンカモメの20%以上が
薬剤の効かない大腸菌などの病原菌を保有していることを発見した。
大腸菌は、場合によって、尿路感染症や致死性の敗血症、髄膜炎を引き起こす。

 今回の研究で、一部のカモメのふんに、従来の抗生物質が効かない細菌感染症への最後の切り札として使われる
カルバペネム系抗菌薬に耐性を持つスーパーバグが含まれていることが判明。
パースのコテスロー・ビーチで見つかった1羽のカモメは、他のすべての抗生物質に効果がなかった場合に最後の治療法として用いられる
抗生物質コリスチンへの耐性を持っていた。
オーストラリアの野生動物の中でコリスチンへの耐性を持った事例が確認されたのは、今回が初となる。

 オーストラリア保健省の報道官は、これまで鳥から人への感染リスクが認識されていなかったため、カモメは抗生物質への耐性を持つ生物としては
監視対象外だったと述べている。
カモメや他の鳥が保有する抗生物質耐性菌は、複数の国で確認されている。

 2010年、ポルトガルの研究者らが一般的な抗生物質バンコマイシンの耐性菌を持つキアシセグロカモメを発見した。
それ以降、フランス、ロシア、グリーンランド、シベリア、そして米アラスカ州でもスーパーバグを保有するカモメ科の鳥が見つかった他、
2016年にはコリスチンの耐性を持つ病原体がブタの腸内から発見された。

 カモメの活動範囲は、ふ化した場所から最長1600キロに及ぶため、マードック大学の獣医ウイルス学者、マーク・オデア博士は、
スーパーバグが他の鳥を通して農業地帯に「飛び火」するのではないかと懸念を示し、
「カモメから他の生物に感染している証拠はないが、検証する必要がある」と述べた。

 これまでに確認されたいくつかのケースでは、家庭ごみとの関連が示唆されている。
マードック大学の獣医学と感染症の講師、サム・エイブラハム博士は、カモメは一般的に魚など海の生物を餌にしているものの、
都市部に生息している個体は、ごみ処理施設や、使用済みオムツ、尿漏れパッドなどが捨てられたごみ箱などをあさり、
スーパーバグを取り込んでいると指摘。
「今回の発見は、政府と、水処理やごみ処理を管轄する部門など、あらゆる関係機関に対し、この問題に団結して取り組むべきだという警鐘を与えたのではないか」
との見方を示した。

 カモメのふんに触れ、そのふんを誤って口にしてしまうと、菌が人に感染する恐れがある。
オデア博士は、子どもがカモメのいた草や岩の上で遊んだ後に口を触ると感染してしまう恐れがあると指摘した上で、手洗いをすれば、
そのリスクは除外できると述べた。