ひずむ郵政(1)の1 認知症女性、保険料月25万円

 昨年6月、山口県山陽小野田市の女性(71)宅を訪れた親族男性が、郵便受けにあった2通の督促状を見つけた。
 送り主はかんぽ生命保険。
 滞納分の保険料約42万円の支払いを求める内容だった。

 女性は軽度の認知症を患い、小学校時代から引きこもりがちだった長男(42)と2人暮らし。
 親族男性が女性宅を探すと、保険証書が次々と見つかった。
 2017年5月に一度に5件、その後も契約を繰り返し、1年間で11件の保険に加入させられていた。
 うち5件は、ほとんど同じ内容の終身保険だった。

 女性の収入は年金など月約13万円。
 保険によって死亡や入院時の保障が受けられるとはいえ、月額保険料は支払い能力を大幅に超える25万円以上に上っていた。

 「分からない。郵便局の人に任せているから」と女性。
 通帳を確認すると、1年間で支払った保険料は200万円以上。
 貯金残高は底をつき、かんぽ生命から保険を担保に75万円の貸し付けまで受けていた。
 それでもすぐに残高不足に。そして督促状が届いた。

 近くに住む次男(37)は郵便局に抗議したが、担当者は「資産家だと思っていた」と釈明した上で「さらに貸し付けを受ければ、お支払いできますよ」と開き直った。
 半年間交渉した結果、かんぽ生命は昨年12月にようやく非を認め、全額返金に応じた。

 女性の亡くなった夫は郵便局の配達員だった。
 「郵便局員が人の財産を奪うようなことをするとは思わなかった。これは犯罪だ」。次男の怒りは今も収まらない。

西日本新聞 2019年7月26日 6時0分
https://news.livedoor.com/article/detail/16832250/