CDさえ廃れた昨今、さらに前時代のカセットテープを専門に売る店が、目黒区中目黒の住宅街にある。角田(つのだ)太郎店長(50)は四年前、外資系ネット通販会社アマゾン・ジャパンを辞め、アナログ商品の店舗販売を始めた。携帯カセットプレーヤー「ウォークマン」発売から四十年。回顧だけでなく再評価の動きがある中、「カセットカルチャーの面白さを伝えたい」と語る。(松村裕子)

中目黒駅(東急、地下鉄日比谷線)から10分ほど歩くと、「waltz(ワルツ)」の大きな4枚のガラス扉が目に入る。以前は町工場で売り場は80平方メートルと広く、棚には6000本のテープがぎっしり。1970〜90年代の中古だけでなく、中央テーブルにはお勧めの世界中の新曲が並ぶ。目を引くのは写真や絵が個性的なジャケット。1本1本、店長自ら試聴して特徴を書いた小さなポップが添えられている。

カセットというと想像しがちな演歌はない。あるのはロックやジャズ、サウンドトラックなど。「昭和を回顧するのでなく、現在進行形の新曲を提案する」と角田店長は強調する。

カセットは70、80年代が全盛。角田店長は少年期、好きな音楽をカセットで聴いた。新卒時にはCDショップに勤めた。「いつか店をもちたい」との願望をもち、異動を機に14年勤めたアマゾンを辞めた。

「どうせなら世界で誰もやっていないこと、自分にしかできないことをしよう」。個人的に海外の収集家とカセットを交換した経験から、好きな人は世界中にいると分かっていた。売る店はほとんどなく、1万本以上集めた自分にしかできないと、おそらく国内唯一のカセット店を開いた。

「話題になる」との確信通り、約300件の取材を受けた。2017年にはイタリアのファッションブランド、グッチにインスピレーションを与えた場所として紹介された。経営も2年目からは黒字に転換。「わざわざラジカセを買ってカセットを聴こうと毎日、世界中から客が来る。面白いな」とほくそ笑む。

やわらかでぬくもりのある音、ジャケットやカセットのデザインから「カセットはアート」と言う。「ラジオ番組でパーソナリティーになり、カセットの曲を紹介したい」と夢を語る。

「カセットのブームが来る。商売にすればもうかると思っていた」と全国カセットテープ愛好者連盟の最高顧問で音楽プロデューサーの牧村憲一さん(72)。開店直後に行き「同じことを考えた人がいるんだ」と驚いた。自らは「ビジネスでなく楽しみたい」と14年に音楽仲間と連盟を発足。現在はフェイスブックがあるだけだが、「いいね」は増え続けている。「カセットは交換すれば人とつながることができる。1本からでも商品化でき、個を主張できる。主流でなくとも愛好者はい続ける」とみる。

カセット全盛期を知らない日野市の楽器修理業兼ミュージシャン猪爪東風(いのつめ・あゆ)さん(33)も車にカセットデッキを取り付け愛好する。ワルツにも何度か行ったといい、「早送りや巻き戻しに時間がかかるが、急ぎすぎない感じがいいのでは」と話した。

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2019年9月3日 配信 東京新聞
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