https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-49575048

模倣こそ進化のカギ? 人類は有毒な植物をどうやって料理してきたのか
2019/09/16

ティム・ハーフォード、「近代経済を作った50のこと(50 Things That Made the Modern Economy)」司会者

バート・バークとウィリアム・ウィルズは1860年、欧州人として初めてオーストラリア内陸部を探検した。

結果は思わしくなかった。未熟な計画やリーダーシップの欠如、そして不運が重なり、バークとウィルズ、そして同僚のジョン・キングの3人は、探検の帰り道で食べ物がなくなってしまった。

3人はクーパーズ・クリークと呼ばれる川辺で立ち往生してしまった。くしくもマウント・ホープレス(直訳で「希望のない山」)と名付けられた山のふもとの居住地までたどり着きたかったのだが、砂漠を横断するのに十分な水を運ぶのは無理だと分かったからだ。

ウィルズは「川を離れられなくなった」と記している。
「2頭のラクダは死に、食料のたくわえも尽きた。どうにか生きられるよう試している」

ただ、先住民のヤンドルワンダ人は、ウィルズ一行にとっては過酷な環境の中でも生活しているようだった。
ヤンドルワンダ人は探検隊にケーキのようなものを渡した。それは、ナルドゥー(デンジソウの一種)の胞子のうを砕いて作ったものだった。

バークはその後、ヤンドルワンダ人と仲たがいをしてしまった。そして愚かなことに、銃を撃って彼らを蹴散らした。

この時点で3人はすでに、生き延びる術を身につけていたのだろうか? 3人は新鮮なナルドゥーを見つけ、自分たちでケーキを作ることにした。
最初は問題なかった。3人は力がどんどんなくなるのを感じたものの、ナルドゥーのケーキは空腹を満たしてくれた。

しかしそれから1週間のうちに、ウィルズとバークは死んでしまった。ナルドゥーを安全に料理する手順は、非常に複雑だったのだ。
ナルドゥーはシダの一種で、人間には有毒なチアミナーゼという酵素が詰まっている。チアミナーゼはビタミンB1を取り込むプロセスを妨げ、それが食べ物の栄養摂取を妨げる。
バークとウィルズ、キングの3人は満腹になったものの、同時に飢えていたのだ。
ヤンドルワンダ人はナルドゥーの胞子のうを炒り、水で挽き、できあがったケーキを灰に入れる。こうすることでチアミナーゼの毒素が減っていくが、こうした段階は偶然に学べるものではない。

1人だけ生き残ったキングはヤンドルワンダ人の情けにすがった。ヤンドルワンダ人は数カ月後に欧州人が助けに来るまでキングをかくまった。キングはこの探検隊で唯一の生き残りとなった。

ナルドゥーは、食料品としては希少なものだ。
しかし、同じように有毒なキャッサバの根は、多くの熱帯国、特にアフリカの自給農家にとっては必要不可欠なカロリー源となっている。
(リンク先に続きあり)

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