2011年9月に中島尚俊社長、2014年1月に坂本眞一元社長と2人の社長経験者が相次いで自殺を遂げたJR北海道。2018年1月には、将来の労働組合幹部候補と言われていた組合員も「謎の死」を遂げている。
こうした事態の背後で、いったい何が起きていたのか。

昨年春に起きたJR東労組「3万5000人」大量脱退の背景を探った前回記事につづき、このほど『トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉』を上梓した西岡研介氏が、2回連続で解き明していく。

社長経験者の相次ぐ自殺
〈全社を挙げて企業風土の改善などに取り組んでいる時に、真っ先に戦線を離脱することをお詫びいたします〉

今から8年前、2011年9月に自殺した中島尚俊・第4代JR北海道社長(当時・享年64)が、社員に宛てた遺書の一節だ。

そして、この中島社長の自殺から約2年4カ月後の2014年1月15日、彼の亡骸が発見された小樽市・オタモイ海岸沖から西15キロの余市町、余市港沖合100メートルの海上で、
坂本眞一・第2代JR北海道社長(当時は相談役、享年73)が遺体となって見つかる。わずか2年余の間に、社長経験者が相次いで自殺するような会社が、
「まともな組織」であるはずがない……。私はこれまで、この「2人の社長の自殺」という、国鉄・JR史上、例を見ない"事件"の真相を追い続けてきた。

そこから浮かび上がってきたのは、約20年前から今日現在に至るまで、他労組との「平和共存否定」などという偏狭な方針を掲げ、
JR北海道社員同士の分断を惹起してきた同社の最大組合「北海道旅客鉄道労働組合」(JR北海道労組、約5500人)の「異常な体質」と、
それと癒着した経営幹部による「歪な労政」によってむしばまれてきた、この会社の末期的な姿だった。

JR北海道労組は、JR北海道社員の約8割が加入する同社の最大労組だ。また前回記事で触れたJR東日本の最大労組「東日本旅客鉄道労働組合」(JR東労組)と同様に、
警察当局が今なお、「革マル派」(日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)が、〈影響力を行使し得る立場に相当浸透している〉(2018年2月23日政府答弁書)とみる、
「全日本鉄道労働組合総連合会」(JR総連)傘下単組で、当局が「革マル派とJR北海道労組の関係について鋭意解明に努めている」(2013年11月22日、衆議院国土交通委員会での警察庁官房審議官答弁)とする組合でもある。

JR北海道では2011年5月27日、石勝線を走行中の釧路発札幌行き特急「スーパーおおぞら14号」が脱線。
トンネル内で停止したところ炎上し、乗客、乗員79人が負傷するという大事故が発生した。

この「石勝線特急脱線・炎上事故」を機に、同社が国鉄・分割民営化以降抱えてきた宿痾(しゅくあ)が噴き出すかのように、事故や不祥事が相次ぐのだが、中島社長が自殺するのは、この事故から約4カ月後のことだった。

そして、前述の社員宛ての遺書で、〈「お客様の安全を最優先にする」ということを常に考える社員になっていただきたい〉とつづった中島社長の願いもむなしく、
翌2012年2月には函館線で、3月には留萌線で普通電車が脱線。さらに翌2013年の4月から7月にかけては「北斗20号」(函館線)、「スーパーカムイ6号」(同)、「スーパーおおぞら3号」(石勝線)などの特急列車で、出火事故が頻発した。

政府が会長と社長を更迭
さらに9月19日には、函館線大沼駅構内で貨物列車が脱線。この事故によって、JR北海道がレールの異常(幅の広がり)を把握しながら1年近く放置していたことが判明した。
その後、道内全域の約270カ所で同様のレール異常が放置されていたこともわかり、国土交通省は特別保安監査に乗り出した。

ところが同年11月、この国交省による特別保安監査の過程で、JR北海道が監査妨害を目的に、「レール検査データの改竄」を長年にわたって行っていたという、
JR史上、他に例を見ない不祥事が発覚。前出の坂本相談役が自殺したのはこの約2カ月後のことだった。

坂本相談役の遺体が、余市港沖で発見されてから9日後の2014年1月24日、国交省は、2011年の石勝線の特急脱線・火災事故に続いて2回目の、鉄道事業法に基づく「事業改善命令」と、
国鉄・分割民営化以来、初めての、JR会社法(旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律)に基づく「監督命令」を発令。

https://news.livedoor.com/article/detail/17143506/
2019年9月27日 5時10分 東洋経済オンライン