旅行に出かけるときのチケット手配で、鉄道の座席をどこに指定するか。「窓側」と「通路側」で好みの分かれるところだろう。だが、事故が起きた時、“座った場所”によってリスクに差が生じることがある。

運転する人がどれほど安全を図っていても、事故はゼロにはならない。万一の際、生死を分ける「安全な席」、「危険な席」はどこか。数々の調査データをもとに、その傾向を探った。

◆10両編成なら「4〜7両目」

9月5日、横浜市内の京急線の踏切で立ち往生した大型トラックと8両編成の快特電車が衝突する事故が発生。この事故でトラックの運転手は死亡、列車は先頭から3両目までが脱線した。
とくに先頭車両は大きく傾き、30人以上の乗客が負傷した。

事故について、鉄道評論家の川島令三氏が評する。

「京急は特に安全性を重視しており、先頭車両には必ずモーターを搭載している。床下に重いモーターがついているほうが重心が低くなり、安定するからです。
もしこの措置がとられていなければ、今回の事故でも車両が転覆して被害が拡大していたかもしれません」

川島氏が指摘するように、不幸中の幸いで乗客に死者は出なかったが、たまたま乗り合わせた車両や席によって生死が分かれることもある。
万一の際にはどの席なら助かりやすいのだろうか。乗り物ごとに検証した。

過去に鉄道事故で多くの死者が出たケースとしては、1991年の信楽高原鉄道正面衝突事故(死者42人、負傷者614人)がある。
JR西日本の車両と信楽高原鉄道の車両が衝突した事故で、714人が乗っていたJR車両側の死者は30人。
衝突によって先頭車両が折れ曲がり、多数の犠牲者を出す痛ましい事故となった。

2005年のJR福知山線脱線事故(死者107人、負傷者562人)では脱線した1、2両目に死者が集中。混雑した車内で乗客同士が折り重なるように倒れ、圧死者が多く出た。

先頭や最後部の車両に乗客が集中する傾向があるが、川島氏はこう指摘する。

「安全面を考えれば、衝突や追突の影響を受けにくいのは、編成の中央部分になります。10両編成であれば、4〜7両目あたりが良いでしょう」

ただし編成の中央であっても、乗車位置や座席の場所によって事故発生時のリスクは異なってくる。

2000年に発生した営団地下鉄日比谷線中目黒駅構内列車脱線衝突事故(死者5人、負傷者63人)は、下り列車の最後尾車両が脱線、隣の線路上にはみ出し、対向する上り列車と側面衝突したものだった。
この事故で、被害が大きかったのが各車両の「端」だ。死者5人のうち2人が、連結部に近い端の席に座っていた。

「電車の連結部がある車両の端はオーバーハングと呼ばれ、一番振動があり構造的にも疲労を起こしやすい」(川島氏)

前述の通り、モーター搭載車両は低重心で転覆しにくく、より安全とされるが、どう見分ければいいのか。

「新幹線とJR四国以外のJR各社、及び一部私鉄では、車両側面に『モハ』『サハ』などの形式を標記しており、『モ』が付いた車両がモーター車の目印となります。普段使う路線は調べておくといいでしょう」(川島氏)

※週刊ポスト2019年10月11日号

https://news.livedoor.com/article/detail/17158009/
2019年9月30日 7時0分 NEWSポストセブン