■ネコの気持ちがわかる「キャットウィスパラー」は存在することが最新研究でも判明

 カナダ、グエルフ大学の行動生物学者ジョージア・メイソン氏は、シルビーとルークという名の2匹の茶トラネコを飼っている。彼女はネコシッターが送ってくる2匹の写真を見て、「機嫌がいいか、不安を感じていて機嫌が悪いかがわかります。夫の意見ともだいたい一致しますよ」と話す。

 そのメイソン氏が主導した最新研究で、ネコの顔の表情から気持ちを読み取れる能力をもつ人――巷間で「キャットウィスパラー」と呼ばれる人々が、確かにいることがわかった。 (参考記事:「岩合光昭 ネコが幸せになれば人も幸せになれる」)

 同氏の研究チームは、ネット利用者(彼らは最大のネコファンクラブとも言える)をランダムに選び、85カ国から6329人を被験者にオンライン調査をおこなった。具体的には、ネコの表情を撮った短い映像を2〜20本見てもらい、ネコの機嫌が良いと思うか悪いと思うかを回答してもらった。20点満点で、結果は平均11.85点。つまり、確率的にはまぐれ当たりよりも少し良い程度だ。

 ところが、被験者の約13%は、ネコの感情を読み取るのが非常にうまく、20本の映像のうち15本以上正解した人がいた。自己申告だが、若い人、女性、動物医療に従事経験がある人ほど得点は高かった。メイソン氏が一番驚いたのは、現在ネコを飼っているかどうかは、ネコの気持ちがわかる能力と関係ないことだった。なお、あなたが「キャットウィスパラー」かは、この短縮版クイズ(外部のサイトに移動します)で試せる。

 同氏の今回の論文は、学術誌「Animal Welfare」の2019年11月号に掲載された。「顔の表情はコミュニケーションの主要な形だ」と語るメイソン氏によれば、最近の研究では、ラットから犬や馬まで、多くの動物が「表情で気持ちを明確に伝えている」ことが示されているという。

 2019年初頭に発表された別の論文でも、ネコ同士のコミュニケーションも同じだとしている。また、この論文では、人もネコの顔の表情から、ネコの意思をくみ取っていることも示唆された。

今回の研究で、グエルフ大学キャンベル動物福祉研究センターのメイソン氏のチームが着目したのがYouTubeだ。というのも、YouTubeは、ネコの行動をとらえた映像の世界最大の宝庫だからだ。

 4秒未満の動画で、ネコの顔(目、鼻、口)がはっきり映っており、明らかに「リラックスしている」もしくは「動揺している」状況という基準を設け、かなりの時間をかけて、ネコの映像を徹底的に調べ上げた。動画についたナレーションや説明が、ネコの状況を理解するのに役立った。

 ちなみに、動揺しているネコの動画の多くが、動物病院で撮られたものだった。なお、ネコが恐怖を感じているサインとして有名な、耳を後ろにピンと張っていたり、牙をむき出しにしたりしている映像は選んでいない。

 膨大な動画の中から、最終的に機嫌の良いネコと悪いネコの映像を20本ずつ、合計40本の短い動画を選び出し、それぞれをネコが動いているものと休んでいるものに選り分け、ネコの動きが被験者の判断に影響が出ないようにした。

 今回の研究では、人はネコのネガティブな感情よりもポジティブな感情の方が察しやすいことも明らかになった。例えば、メイソン氏の飼いネコ「ルーク」が満足している映像の正答率は70%超だった。

 米カリフォルニア大学デービス校のネコの行動の専門家ミケル・デルガド氏は、この研究は「人が、限られた情報から、ネコの心の状態を特定できることを示しています」と話す。

 同氏は、この研究がネコのコミュニケーションを解き明かす「素晴らしいスタート」だとも述べつつ、表情という一つの情報だけでネコの心の状態を特定することに対しては警告する。「ネコのボディーランゲージについて、私たちが理解すべきことは、まだたくさんありますから」(デルガド氏)。なお、同氏は今回の研究には関わっていない。

 尻尾や耳の位置などのボディーランゲージも、ネコの気持ちと関連するシグナルだ。

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