0001ばーど ★
2019/12/13(金) 22:14:35.15ID:Rn04FyhC9.
「二度漬け禁止」の串カツ屋が並ぶ通りに昔懐かしいスマートボール屋さんがある。新世界は、観光客が急増したが、懐かしさを求めてひとり、スマートボール台に向かう人は意外と多い。100円を入れると25個のガラス玉が出てくる。ガラス玉を一個ずつ手動レバーで打つ実に単純な遊びに惹かれる大人たちがいる。
夕暮れ時、ひとり台に向かうおじさんがいた。見かけは上品でベレー帽をかぶり絵描きのようないで立ち。「昭和の遊びって、安らぐよね」。うつむき加減で、そう笑ってくれたおじさんは、64歳。今は一人、安アパートで暮らしている。九州で生まれ、高校を卒業して大手新聞社で18年勤めたという。90年代に入り、活版印刷はコンピュータ化された。能力が追いつかず、新聞社を辞めたのは、38歳の時。それから職を転々とし、警備員を8年したのち、ふと働く気がなくなった。そして、ホームレス…。その時、感じたことがあった。「僕は路上で、ただ受け身で待っているだけの人だ。空き缶を集め、誰かが捨てたお弁当を人前で食べるひとを尊敬した。やってみればわかる…」。ホームレスさえ、うまくできなかった頃、人生を投げていた。今は僅かな年金で暮らしている。
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■流れ着いた町、新世界
スマートボールのガラス玉は、全く穴に入らず、転がり落ちていく。おじさんは、100円玉を追加して、話しを続けた。
ホームレス生活が嫌になり、ひとのためになる仕事がしたい、と福島県で放射線の除染作業をやった。集団で車に乗り、土壌の表面から取り除く作業…。放射線量が、目標値にまで下がれば終了。「ええ加減な、適当な作業やった」と振り返る。その時、派遣先の親方に給料をピンハネされた。奴隷のように扱われた末の出来事。「もう怖くなって、逃げた」。そして行き着いたのが、知り合いの“ママ”がスナックを営んでいた大阪。ここ新世界に来ると、スマートボールを打ち、お酒を飲むのが楽しみだ。虐げられた仕事でさえ、新世界では酒の肴になった。この町では、誰も過去は詮索しない。「みんな流れ者だから、過去に傷があるのかもね」とおじさんは言った。
■カバンに遺書を忍ばせる
おじさんは、話を続ける。「いま、遺書をこの小さなカバンに入れている。“実家のお墓には入れなくていい”と書いてある。兄弟はいるけど、死ぬまで連絡することはないよ。もうすぐ65歳。家族に会いたいとは思わない。結局、僕がこういう人生を選んだから。しかも、バカなことにこんな年齢で今、好きな人がいる。けれど、本当に好きになろうとは思わない。深く付き合うと傷つくのがわかるから」。
最後に残ったスマートボールのガラス玉が、おじさんが握ったレバーから放たれた。幾度となく釘に弾かれ、転がっていく。結局、穴には入らなかった。ずっと台に目線をやっていたおじさんが、顔を上げた。「玉がなくなっちゃったね」、そう笑うと言葉を続けた。「めったに喋らないこと、話してスッキリしたかも…、漫才でも見に行こうかな。お笑いは時々、無性に見たくなる。ヘンかな?」。そう言うと店を出た。別れ際、ジャケットのポケットに小さなワインボトルをみつけた。「これ、気つけ薬みたいなもの。少しでも前へ進みたいときに飲む」。ニコッと笑うとおじさんは、新世界の演劇場のほうに消えた。
■3ヶ月に一回、通うスマートボール店
外が薄暗くなるにつれて、串カツ目当ての客で新世界は賑わう。客が減ったスマートボール屋さんで、慣れた手付きでガラス玉を打つおばさんがいた。
以下ソース先で
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12/13(金) 20:07
MBSニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191213-00010002-mbsnews-l27&p=1