■世界的に進む大手企業による市場寡占

 世界経済全体で、一握りの有力企業による市場の“寡占”が進んでいる。言い換えれば、特定の企業が、社会や経済に与える影響が高まっている。

 1つの例を挙げると、IT業界では米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)が大量の個人のデータを収集し、社会に対する影響力を増大しているケースがある。ほかにも、自動車や航空機など多くの産業分野で同様の傾向がみられる。

 寡占が進んできた背景の1つには、世界経済が急速かつ大きく変化していることがある。世界各国で新しいテクノロジーの開発と実用化が“秒進分歩”の勢いで進んでいる。それにより人々の行動様式も大きく変わり、企業を取り巻く競争環境は激化している。対応するために、企業は体力をつけなければならない。そうして多くの分野で大手企業の経営統合や買収が増え、特定企業のシェアが高まっている。

 今後も、寡占は続く可能性がある。その中で企業が変化に対応し、持続的な成長を目指すためには、成長が期待される新しい分野に進出し、より付加価値の高い新しい商品やサービスを生み出すことなどが求められる。同時に、企業のイノベーション創出を支えるために、政府が構造改革などに取り組むことの重要性も増していくだろう。
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■私たちの生活には無視できない影響が及ぶ

 寡占が進む業界は枚挙にいとまがない。最も顕著な業界がIT分野だ。米国のグーグルは検索エンジン分野で圧倒的なシェアを誇っている。モバイル端末の検索エンジン分野において、グーグルのシェアは約94%に達している。スマートフォン用OS市場においてもグーグルのアンドロイドは85%程度のシェアを誇る。

 ITデバイス、半導体、自動車、造船、金融、医薬品、機械、5Gをはじめとした通信設備など、多くの業界で一部企業にシェアが集中している。世界全体で、競争を優位に進めることのできるシェアやテクノロジーを持つ企業がより多くの需要を取り込んで成長し、その存在感がさらに大きくなる展開が続いている。反対に、変化に対応することが難しい企業は、急速にシェアを落とし、淘汰されてしまうケースが増えている。

 寡占が進むと、私たちの生活には無視できない影響が及ぶ恐れがある。その1つに“データの寡占”がある。

 2016年の米国大統領選挙の際、米フェイスブックのユーザー約5000万人分のデータが不正に英国の分析会社に取得された。それは、大統領選挙の結果に影響を与えた可能性があると指摘されている。

 また、多くの個人や組織が特定の企業が提供するITサービスに依存するようになると、その企業の経営方針などが個人、企業、公的部門に無視できない影響を与えることも考えられる。

 データの寡占化を食い止めるために、欧州連合(EU)を中心に大手ITプラットフォーマーへの規制強化に取り組む国は増えている。一方、規制の強化は、企業の成長を抑制し、経済成長にはマイナスに働く部分もある。各国ごとに、規制強化への取り組みには温度差がある。その間も、最先端のネットワーク・テクノロジーの開発などを受けて、企業の優勝劣敗は鮮明化し、寡占が進んでいる。

■寡占化を後押しする不確定要素

 世界経済を取り巻く不確定要素が増えていることも、寡占化を後押しする要因の1つだ。企業が急速な変化や先行きのリスクに対応するためには、どうしても体力をつけなければならない。

 最先端のがん治療薬などの分野では競争力ある新薬やその開発に関するテクノロジーの確保、新薬候補(パイプライン)の取り込みなどを目指し、世界の大手製薬企業が買収や提携などをくり返している。このようにして、大企業がさらに巨大化し、寡占が鮮明となってきた。

 世界経済が大きく、加速度的に変化している要因として、急速なネットワーク・テクノロジーの開発とその実用化の影響は軽視できない。人工知能(AI)の実用化などに伴い、次から次に新しいデバイスや、サービスが生み出されている。

 新しいテクノロジーの登場とともに、人々の生き方も変化する。たとえば、わが国でも自動車のシェアリングが普及している。カーシェアのサービスを利用することで、人々は自動車の所有にかかるコストを抑えられる。同時に、浮き出た資金を用いて趣味を楽しむなど、より満足度を高めることもできる。



12/23(月) 17:15配信  全文はソース元で
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