https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191224/k10012226231000.html


河川の氾濫危険性 “より早期に把握を” 研究進む
2019年12月24日 1時35分台風19号 検証

台風による洪水被害が激甚化していくなか、台風が接近する半日以上前に氾濫の危険性の高い川を絞り込む研究が進められています。川の氾濫が直前に迫ってからの避難は命に関わるため、危険性を早期に把握し、早めの避難につなげることが期待されます。

河川の氾濫危険性の予測 現状は「3時間先」まで
河川の氾濫の危険性について、大きい河川では、水位の観測データや雨量の予測をもとに、気象庁が国土交通省や都道府県と共同で「氾濫危険情報」や「氾濫警戒情報」などといった「洪水予報」を発表しています。

一方、「洪水予報」が発表できない中小河川では、気象庁が、雨量の予測をもとに地図で川を色分けして氾濫の危険性を示す「危険度分布」を発表しています。

ただ、予測は「3時間先」までで、危険性を把握した時にはすでに雨が強まっていたり、水位が上がっていたりして、避難が難しくなるケースもあり、危険性をいかに早く把握するかが課題となっています。

氾濫の危険性 “より早く把握を”

洪水予測が専門の京都大学の佐山敬洋准教授は、こうした課題を克服しようと半日以上前でも氾濫を予測できる研究に取り組んでいます。

佐山准教授は、気象庁の39時間先までの雨量予報を使って、全国の中小河川ごとに川に流れ込む水の量、「流出量」を計算しました。

「流出量」は、川を流れる水の量を上流の流域面積で割ることで算出され、佐山准教授によりますと、中小河川では1時間に30ミリを超えると氾濫が発生しやすいということです。

佐山准教授は、氾濫の危険性が上がるごとに、川の色を黄色から青色、紫色と変化する地図に示しました。

その結果、台風が上陸する半日ほど前の、10月12日午前9時の気象庁の予報をもとにした解析では、関東地方の西側の山間部や、栃木県の足尾山地付近、宮城県や福島県の一部など、「流出量」が30ミリを超えたことを示す紫色が広がりました。

青色から紫色になっていた中小河川の多くでは、実際に氾濫や決壊の被害が出ていました。

現時点では、計算に時間がかかるなど課題もありますが、佐山准教授は、この予測が早期に行えれば、早めの避難に利用できるとしています。

佐山准教授は「従来よりも早い段階で洪水の危険性がわかるので、リアルタイムに計算ができるようになれば、住民の早期避難につなげられるのではないか」と話していました。