ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之氏から性的暴行を受けたと訴えた裁判で、東京地方裁判所は合意なき性行為を認め、山口氏に330万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

これは、日本人が司法の力を信じ続ける理由に足る判決で、間違いなく性暴力被害を巡る論争のティッピングポイントとなるだろう。

しかし、である。日本において、性暴力を含むハラスメントの防止措置は、いまだに十分とは言えない。十分ではないどころか、フリーランスや就活生、インターンにとっては無法地帯である。

伊藤さんは、まさに求職活動の一環で山口氏にOB訪問をした際に被害にあっている。実名顔出しで事実を公表し、加害者を訴えた伊藤さんの勇気と行動力には頭が下がるばかりだが、深い傷を負ったまま声を上げられずにいる人が、世の中にはまだまだたくさんいる。

■フリーランスや就活生を取り巻く環境は無法地帯

筆者が代表理事を務めるプロフェッショナル・パラレルキャリア・フリーランス協会が8月に公表した「フリーランスや芸能関係者に対するハラスメント実態アンケート」によると、1218名の回答者のうち882名、つまり回答者全体の72.5%が何らかのハラスメントを受けたことがあることが分かっている。

具体的には、パワハラ被害経験者が61.6%、セクハラ被害経験者が36.6%、マタハラやSOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)ハラなどその他のハラスメント被害経験者が18.1%にのぼった。

調査を行ったのは、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、日本俳優連合、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)フリーランス連絡会の3団体だ。

具体的なハラスメントの内容を聞く設問には、自由記述回答にもかかわらず驚くほどたくさんの生々しい実体験が寄せられた。

典型的なパワハラ、セクハラはもちろん、レイプや自慰行為を見せられたなど、もはや刑事事件と思われるものもたくさんあり、読んでいて胸が痛くなる。

参考までに、匿名での公開可とされた回答のほんの一部を紹介させていただくと、こんな感じだ。


・打ち合わせと称して、ホテルに呼び出されてレイプされた。その後、数カ月の軟禁。公私ともにDV・連日のレイプでボロボロに。(女性40代、映像制作技術者)

・主催者の自宅で稽古をすると言われて行ったら、お酒を飲まされて性的な行為をさせられた。(女性20代、女優)

・元大学教授の財団理事長から、ヒアリングの場所を、日帰りの難しい距離にある別荘を指定された。双方の仕事場が都内にあるのに、毎回、別荘以外では会わないと電話で言われる。(女性40代、研究職)

・取引先に私的な交際を迫られ、それでも仕事の関係者なのでやんわりとお断りしたところ、逆上され毎日ひどいメールを送り付けられた。こちらも応戦せざるを得なくなると、色んな理由を付けてお金を支払ってくれなかった。(女性40代、広報)

・殴られたり蹴られたり、翌日は病院に行き休んだ日もあった。(男性30代、映像制作技術者)

これらはあくまで回答の一部である。伊藤さんの一件は、たまたま起こった不幸な出来事ではなく、あくまで氷山の一角でしかないのだということが、ありありと想像できるのではないだろうか。

こうした調査結果を受けて、我々フリーランス協会ら3団体は9月9日に、アンケート調査の報告書と「フリーランスへのハラスメント防止対策等に関する要望書」を、厚生労働省および労働政策審議会雇用環境・均等分科会の各委員宛てに提出した。翌日には記者会見を行い、その内容は数多くのメディアに報じられた。

また、要望書に対する賛同を求めるChange.orgのキャンペーンに10月17日時点で集まった8777名分の署名を、厚生労働省の雇用環境均等局に提出した。署名はその後も増え続け、12月19日現在では1万100名を超えている。

■「対象が広がり過ぎると現場が混乱」と経団連

こうした活動も汲まれ、10月21日の労働政策審議会で厚生労働省が出した「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」(以下、指針案)では、

以下ソース先で

Dec. 19, 2019, 06:45 PM Businessinsider
https://www.businessinsider.jp/post-204516
https://assets.media-platform.com/bi/dist/images/2019/12/19/RTS2VCHX-w1280.jpg