島国で海に囲まれた日本には、水の中にも多くの遺跡・遺物が眠っている。このような水中の遺跡は世界各地で調査が進んでいるが、日本ではこれらを研究できる学者がほとんどいないという。

一般に「水中考古学」と言われるジャンルの学問だが、日本にいる数少ない学者のひとりがツイッターで現状を訴えたところ、多くのネットユーザーの注目を集めた。「水中考古学」は今までどんな成果を挙げてきたのか。なぜ研究者が窮状を訴えるのか――。J-CASTニュースが取材をすると、海に囲まれた日本でのこの学問の意義もわかってきた。

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中韓には専門の博物館があるが...

2019年12月にツイッターで声を上げたのは、九州国立博物館に務めるアソシエイトフローの佐々木蘭貞(ランディー)さんで、20年3月で九州国立博物館での任期を満了する予定だという。佐々木さんはツイッターで「水中考古学・沈没船研究」というアカウントで情報発信をしていたが、12月12日に日本では他国に比べ学者の数が少ない現状などをツイートしたところ、約2万リツイートの反響があった。

日本の水中考古学研究は、海外に比べると研究者の数や、組織づくりの面で立ち遅れていると佐々木さんはツイッターに投稿していた。海外では韓国・中国で水中遺跡専門の博物館があり、主要各国には50〜100人程度の研究者がいるが、日本の研究者は佐々木さんを含め数人にとどまるという。

まず、水中考古学とはどんな学問なのか。J-CASTニュースの取材に対して、厳密には「水中考古学」なる学問名はなく、考古学・歴史学にとっては本来水中の遺跡も陸上のものと同様に研究の対象で、たまたま水中に研究対象があると佐々木さんは語る。ただし、水中のものゆえ研究手法が特殊で、それゆえ特殊な学問というイメージがあるのではと推測している。

水中考古学は一般的に「海事考古学」や「船舶考古学」に分類される。前者は人類が海・湖・川を利用してきた歴史を研究し、後者は船の歴史や沈没船、また陸上で出土した船も調査する。対象年代も3000年前の沈没船から近現代まで幅広い。佐々木さんは日本出身で、海外の大学・大学院で専攻、元寇の沈没船等といった海底遺跡の研究実績がある


1960年代から本格化、まだまだ水中に眠る遺跡たち

水中の遺跡研究は19世紀から始まっていたが、1960年代以降から本格的に進んだ。スウェーデンの17世紀の軍艦ヴァーサ号は海底から引き揚げられて観光客に人気の博物館となり、イタリア南部のカンパニア州バイアにあるローマ時代の海底遺跡は、調査の上「バイア海底考古学公園」として整備され、ダイビングスポットにまでなっているという。

日本では長崎県鷹島に沈む元軍の沈没船や、北海道江差沖で沈没した幕末江戸幕府の軍艦・開陽丸の調査も進んできた。沖縄では島しょの沿岸部に約100件の遺跡が確認され、伊豆半島の初島海底遺跡では江戸城修復のために作られた瓦が発見されている。海のみならず内陸でも、琵琶湖で100件ほどの遺跡が調査されている。

世界では現在、水中の遺跡は引き揚げずにそのまま保存するのが望ましいとされる。全世界の海底に眠る沈没船は300万隻以上、数万件の遺跡が存在しているが、しっかりと潜水調査が行われた遺跡は数千件、完全に発掘されてすべて引き揚げられた例は各国で1〜3件にとどまるそうだ。

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2019/12/28 07:00
JCAST
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