2019-12-30

2019年は、1月にイギリス国会でメイ首相のEU離脱協定案が否決されるところから始まり、12月にジョンソン首相のEU離脱協定案が可決されて終わったことが象徴しているように、反グローバリズムの潮流が主流へと転換しつつあることを強く感じさせる1年でした。

EU議会選挙でも、イギリスではブレグジット党が第1党、フランスではマリーヌ・ル・ペン氏が率いる国民連合がマクロン大統領を破って第1党、イタリアではサルヴィーニ氏の極右政党・同盟が30%の得票率を確保、ハンガリーでは、反移民を掲げる与党の右派フィデス・ハンガリー市民連盟が52%と大勝し、ポーランドではEUとの対立を繰り返す政権与党が他党を圧倒、ドイツでも極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は11議席で4位となり、議席を増やし、スペインでも、極右のVOXは6.2%と5位だったが、前回ゼロから3議席を獲得しました。

他にも、「ドイツはついに景気後退にEU=グローバリズムの限界が露呈」、「フランスのマクロン大統領もグローバリズムから転換か?」「イタリアで親EU政権が成立したのは、国民の反EU 感情が高まった結果」に見られるように、EUの主要国でグローバリズムの限界が露呈し政策の転換をよぎなくされてきています。

しかし、従来の金融勢力が推進する自由経済を中心としたグローバリズム勢力が明らかに衰退する一方で、環境や人権、平和などを掲げてナショナリズムを否定し、グローバリズムを推進する勢力が登場し、反グローバリズム勢力をしのぐスピードで拡大しています。「ドイツのメルケル政権は崩壊の危機、環境政党との連立を模索?」「デンマークでは極右政党支持が半減、これはEUの転換点か?」「オーストリア総選挙、緑の党躍進は形を変えたグローバリズムか」

緑の党に代表されるような環境政党は、グローバリズムとは無縁のように見えますが、もともと、地球温暖化説は環境保護を建前に、原子力発電や二酸化炭素排出権取引、環境にやさしい事を売りにした新製品などの、新市場拡大のためにグローバリズム勢力が仕組んだ動きでもあります。そして、多くの環境団体は労働組合運動などの低迷を受けて、旧左翼勢力が立ち上げたものがであることも良く知られていることです。

従来の政治勢力は、産業界=右翼・保守政党と、労働界=左翼・革新政党と言う分かりやすい対立構造がありましたが、いまそれが大きく崩れ再編成が進んでいる状況です。反グローバリズム側は、保守政党を中心に生産業界(農林漁業含む)と一般労働者、そしてグローバリズム側は、環境政党を中心に革新政党、金融業界、IT業界、マスコミ、高級官僚が集まって来ていると思われます。

今、EUでは加盟国28か国の内で21か国の政権が連立政権(ドイツ3政党、フランス3政党、イタリア2政党、ハンガリー2政党、ベルギー3政党、デンマーク3政党、フィンランド5政党、オランダ4政党、ポーランド3政党、スウェーデン2政党)になっているのも、従来の政党の枠組みが崩壊し再編の途中にあるからです。アメリカでも、イギリスでも従来グローバリズム(自由経済)を推進してきた保守政党(米共和党、英保守党)が反グローバリズムに、そしてグローバリズム(自由経済)を否定してきた革新政党(米民主党、英労働党)がグローバリズムに転換しているのも、この再編の動きの結果なのです。

これまでは、金融業界が力を失いグローバリズムの潮流は衰退の一方でしたが、環境政党に加え、マスコミ、IT業界が加わることで、勢力は大きく変化する事になるかもしれません。特にIT業界は、グローバリズムの恩恵を最大限に活用し、利益を独占し経済格差の拡大をもたらした中心勢力であり、今や金融、マスコミ、物流まで包摂し拡大を続けています。今年は反グローバリズムが躍進した年でしたが、来年はIT業界が環境政党を表に建てながらグローバリズムの復権を推し進める年になるのかもしれません。

http://www.kanekashi.com/blog/2019/12/6732.html
https://i.imgur.com/ozCRfC9.jpg