3つのポイント

 こうしたデフレ経済において、外食産業が生き残るためには以下の3つのポイントが基本であり、それに絡んで、現状は「テイクアウト」が重要となる時代であるだろう。

 キーポイントは以下の3点。これらは、今後も永続的な課題となる。

 一つめは、GDPの「個人消費」のうち過半数を占めるシニア、高齢者、こうした層をどう取り込んでいくのか、ということ。

 二つめは、「共働き世帯」をどう取り込むか。いま個人消費を底支えし、外食産業に大きな影響を与えているのは、共働き世帯の中食、総菜需要、テイクアウト需要である。

 そして、三つめが「個食」である。高齢者は今後も単身化が加速する。若者の間では晩婚化が進み、非正規労働による将来不安からのデフレマインド、消費性向が高いのは、通信費、自由に使える高額消費需要はない。その中で魅力的に映るのは、普段から手間をかけられずに食べられる安いものか、「たまの外食」の際に魅力を発揮できるものである。

 外食産業がフォーカスすべきは、この3点だ。

 シニアの場合、脂っこい食べ物は胃腸への負担が大きく「飽き」を感じさせてしまう可能性が高い。飽きのこない食べ物を提供する戦略とれるかどうかが重要となる。

 続いて共働き世帯は、テイクアウトが重要になる。特に揚げ物など、多くの人が「家でやりたくない」と思うような料理の需要を喚起できる業態の企業は有利だ。また、子どもの食育、健康ニーズをうまく捕まえることができるチェーン店にも大きな可能性がある。

 個食をターゲットにする場合、シニアにとっては、ロケーション――つまり、すぐに買いに行けるかどうか――が重要である。また、Uber Eatsを見ればわかる通り、若者〜中年世代にとっても、今後は「すぐに届けられる」「すぐに買いに行ける」という点も、需要喚起において重要な意味を持つだろう。

 また、個食について盲点になりがちなのが「朝活」である。働き方改革の影響などにより朝はビジネスマンが活用する時間帯と位置付けられるようになってきている。セブンが朝の時間帯の割引キャンペーン「朝セブン」を、モスバーガーが朝食セット「朝モス」を始めてからしばらくたつが、各社も力を入れている。

 上記のような戦い方があるなかで、今は集客手法による競争優位を外食産業の各社が狙っている。

 なかでも、キャンペーン――特にSNSでのキャンペーン告知は即効性が高い。また、大規模店舗ほど多くの店舗での集客につながるので、この戦略の恩恵をうけやすい。

 これも先行した成功事例があれば、他社もすぐに取り入れるので、先手先手でやる必要性があるが、直近でいえば、かつやの100円割り引きチケットは、リピート率50%などと言われており、他社も多く取り入れるようになっている。

 テイクアウト割り引きも、今後は徐々に増えてくると考えられるが、そうなると効果も限定的となっていく。「テイクアウト」集客手法も効果は下がり続けていくと想定されるが、現状としては、消費税、軽減税率というインパクトのなかテイクアウトを活用するのが吉と各社が想定しているのだろう。

 松屋の「自販機」の導入は、最初はオフィス街ということだが、今後の展開が見込まれ、「個食」や「共働き」への訴求力が期待される。他社もすぐにマネできてしまうというのがこの業界の業績や成否の変動が大きい要因にもなっている。特許など知財戦略で、同業他社がマネできない集客ツールを独占しづらいことも、この業界の競争が結局「価格ありき」になりがちな理由でもある。

1/11(土) 8:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200111-00069632-gendaibiz-bus_all&;p=2