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富山空港(富山市)と岐阜県の高山駅を結ぶ直通バス(125キロ)が昨年9月から1日2往復を運行している。富山県がバス会社に委託し、PR費用などを含めると予算総額2440万円の事業。昨年末までの平均利用者数は1回あたり、わずか0.76人。PR不足だけでなく、需要が見込まれる路線ではないという声が上がる。(向川原悠吾)


県、空の便 利用増へ始めたが…


 昨年十二月下旬、富山空港の午前九時二十分発高山駅行きのバスに記者が乗り込んだ。乗客は他に見当たらず、シートを倒して休んでいた運転手は記者に驚いた様子を見せた。


 「静かなバスですね」。そう伝えると、「私が運転する時はいつもゼロです。好きなところで降りていいですよ」と運転手は冗談交じりに返した。高山駅まで、富山県南砺市菅沼のバス停を経由しながら高速道路を使い、二時間半をかけて、たどり着いた。定員四十五人の大型バスは記者以外ずっと空席のまま。平均一人に満たない利用者数には納得がいった。


 高山からの帰路も同じ路線を使った。バスに乗ろうとすると、行きとは違う運転手がまたもや驚いた様子。「いつもほとんど乗らないから」と物珍しく見られた。富山空港に着くと「毎回空気を運んでいます」と自虐を込めて話した。

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 運行は空港利用者を増やそうと始まった。富山空港は、年間約四百四十万人が訪れる観光名所の岐阜県高山市に最も近い空港。直通バスが走る前、富山と高山を結ぶ公共交通機関は富山駅発着の高速バスとJR高山線の特急列車だけ。空港発着の直通バスは利便性が高められると実験的に始まった。


 富山県総合交通政策室によると、富山を訪れた空港利用者に数日間にわたって尋ねたアンケートでは、回答があった約千三百人のうち3・7%が高山市やその周辺を目的地としていた。県は観光客や飛騨地区の人たちから一日十数人程度の利用を想定していたという。


 しかし、始めてみると、一日二往復、往復五千四百円のバスの利用者数は四カ月で計三百七十三人と想定を大きく下回った。県はインターネットや高山市内などで宣伝を続けているが、浸透していない。高山市の四十代女性は「そもそも車が駐車できる富山空港に飛騨からバスで行く人は少ないと思う」と首をかしげる。台湾から観光に訪れた女性(31)は富山空港から富山駅を経由した後、高山市に向かった。直通バスの存在は知らなかったが「ガラス美術館だったり、富山にも観光できるところはある。すぐに高山に行かなくてもいい」と話した。


 直通バスの二〇二〇年度の運行は未定となっている。県の担当者は「それなりの判断は必要になってくるかもしれない」と話している。

2020年1月12日
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