【ニューヨーク=宮本岳則】米株市場で巨大IT(情報技術)企業の独走が続いている。米検索大手グーグル親会社のアルファベットの時価総額は1兆ドル(約110兆円)に迫る。達成すればアップルなどに次ぐ4社目。新興IT株が伸び悩むなか、創業から20年を超える「老舗」の強さが際立つ。世界の当局はデータ独占を懸念し、監督を強めているが、市場は「規模の優位性は不変」とみているようだ。

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アルファベット株は1月に入り、上昇に弾みがついている。13日も過去最高値を更新し、1月の上昇率は足元までで前月末比7%に達した。この水準で1月を終えれば、2019年7月以来の高い伸びとなる。時価総額は9800億ドル台で推移しており、アップルやマイクロソフト、アマゾン・ドット・コムに次ぐ「1兆ドルクラブ」入りに王手をかけた。

米株市場では巨大IT株への資金流入が続いている。米アップルの時価総額は13日時点で1兆3千億ドルを超えており、米企業最大だ。「GAFA」と呼ばれるデジタル・プラットフォーマーの中では、個人データ流出問題の対応に追われたフェイスブックが出遅れており、時価総額は6300億ドル台にとどまる。ただ、株価は13日に最高値を更新しており、投資家の信頼を取り戻しつつあるようだ。

巨大ITの独走は次の「GAFA」が見えないことの裏返しだ。アップルと音楽配信サービスで競合するスポティファイ・テクノロジーの株価は、足元で18年につけた最高値から2割低い水準にある。未上場の成長企業「ユニコーン」として鳴り物入りで新規株式公開(IPO)を果たしたライドシェア大手、ウーバーテクノロジーズの株価も上場時の水準を下回って推移する。

巨大IT企業による買収攻勢が、次のGAFAの芽を摘んでいる側面もありそうだ。アルファベットは11月、腕時計型端末(スマートウオッチ)を手掛ける米フィットビットを21億ドルで買収すると発表した。米調査会社CBインサイツによると巨大IT5社による過去30年間の買収は約750社を超える。潤沢なキャッシュフローを元手に、積極投資でライバルを圧倒するか、傘下に取り込むことで、独占状態を築き上げている。

世界の当局はGAFAによる個人情報の独占に危機感を共有し、監視の目を強める。米国では司法省など連邦当局に加え、州レベルでもIT大手を調査する動きがある。ただ、株式市場では「規制強化によって収益が落ち込むとは限らない」(米運用会社ティー・ロウ・プライスのデイビッド・アイズワート氏)との声が多い。強力なライバルが見当たらず、自動運転など次の技術開発でも先行しているからだ。こうした強気論がマネーを呼び込んでいる。

2020/1/14 4:24
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