展示施設足りず…京都の考古資料「持ち腐れ」 研究者「歴史都市名乗るの恥ずかしい」

 京都市が運営に関わる歴史・考古の施設が老朽化している。歴史資料館(上京区)や考古資料館(同)は展示スペースが狭く、千年を超える京の通史を体系的に伝え学べる場はない。2月2日投開票の京都市長選で争点化されてはいないが、積年の課題の一つ。研究者らは「『歴史都市』や『文化首都』を名乗るには、恥ずかしい現状にある」と刷新を求める。

 歴史資料館が1月23日に開いたギャラリートーク。学芸員による解説に、市民ら約20人が聞き入った。会場にいた京都歴史研究会相談役の武内良一さん(79)=伏見区=は「解説も展示品も良いが、この展示施設では物足りない。市内の歴史は平安京だけでなく、伏見や山科など近郊の歩みもあるのに、カバーできていない」と嘆く。イベントのない日は閑散とし、来館者は伸び悩んでいる。
 考古資料館も同様で、通常開館時の客足はまばらだ。展示スペースは、大阪市や神戸市の市立博物館が3千平方メートルを超えるのに対し、約400平方メートルにとどまり、歴史資料館と合わせても千平方メートルに満たない。文化財を傷めないよう、各地の施設で展示室の湿度や照度を最適に保つ設備の導入も進むが、両資料館にはない。
 市は平安京や中近世の京都に由来する重要な出土品に加え、文化財的価値のある市民の寄託品も所有している。政府の旗振りもあって、文化財活用は政策テーマの一つ。だが、ある文化庁職員は「両資料館の展示施設では、市所有分すら十分に紹介できていない。宝の持ち腐れ」と厳しい。
 かつて歴史資料館長を務めた国際日本文化研究センター名誉教授の村井康彦さん(89)は「1200年を超える都市の歩みや文脈が一元的に分かり、調べられる施設が市内にないのは、歴史都市として恥ずかしいことだ。国や京都府とも協力し、両資料館の機能を拡充させ、出土品や文献、民俗の史料をミックスした新たな展示や文化財活用ができる施設に刷新してほしい」と願う。

開館40周年を迎えた考古資料館。展示スペースは限られ、貴重な出土品を紹介しきれていない(京都市上京区)
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市歴史資料館で行われたギャラリートーク。展示スペースは手狭で、イベント時以外は来場者も少ない(京都市上京区)
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https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/149884
2020年2月1日 19:05 京都新聞