新型コロナウイルスの感染拡大防止へ、政府が示した全国小中高校の臨時休校方針で学校給食が停止がすることを受け、農畜産物の供給に混乱が生じている。学校給食向けの牛乳(学乳)は飲用向け生乳の1割近くで、供給先を失った産地やメーカーは対応に苦慮する。野菜でも給食向け取引のキャンセルが相次ぐなど影響が広がっている。

 学校給食に提供する生乳は、全国の飲用向け(年間約400万トン)の1割弱で全て国産。うち最も供給量の多い関東は年間10万トンを学乳に仕向ける。管内の公立学校が2週間休校になると、このままでは7500トンもの生乳が行き先を失う。

 関東生乳販連は28日午後4時現在で、取引メーカーからキャンセルが相次ぐ。キャンセル分は日量最大で80トンを見込む。余力のある乳業メーカーに引き受けてもらい、難しければ長期休みに稼働率を上げる乳製品工場に納めたい考え。実質、春休みが前倒しになる形だが、工場の人員確保は難しく、どこまで対応できるかは不透明だ。「暖冬で生乳生産が上向く一方、飲用需要も全体的に下がっている。学乳の停止でダブルパンチ」(同生乳販連)と嘆く。

 乳用牛など50頭を管理し、千葉酪農農業協同組合を通じ小学校に牛乳を出荷する千葉県内の牧場の代表は「まだ損害は出ていないが、先行きが見えない。影響の長期化が心配」と不安視する。

 北海道では都府県に定期的に移送する生乳のキャンセルの多発を懸念する。キャンセル分は道内の乳業メーカーが引き受け、主に加工向けに振り向ける。生乳増産と飲用向け需要の低迷に加え、観光客の減少で土産用の加工品需要も低下している。大手乳業関係者は「乳業各社や指定団体と協力して生乳需給が崩れないようにしたい」と話す。

 文部科学省によると、学校給食の1人1食当たりの食品別摂取量(2017年度)は、牛乳が200グラムで最多。野菜類が91グラム、米が52グラムと続く。


 学校給食向けに出荷する産地やJAなどにも影響が及ぶ見通しだ。東京都小平市の小中学校に食材を提供してきたJA東京むさし小平支店は、3月分の野菜などの契約4・5トンがキャンセルとなった。同JAは「非常に混乱している。市場に荷が集中し相場に影響が出るのも心配」と話す。月約200万円分の野菜を東広島市内の給食センターなどに供給してきたJA広島中央は「学校給食は安定した単価で買い取ってもらっていた」ため、供給停止を懸念する。

 学校給食材の供給などを担う各都道府県学校給食会でつくる全国学校給食会連合会は「給食メニューや食材調達は約1カ月前に決めるところが多い。食材キャンセルなど影響は出る」とみる。

 文科省は28日、学校給食に供給してきた産地やJA、業者の支援について「現時点で補填(ほてん)などは想定していないが、影響を踏まえ各省と連携し検討する」としている。
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