恐竜といえばティラノサウルスやトリケラトプスをはじめとして、は虫類に似た動物というイメージがありましたが、近年では鳥類の祖先であるという説が有力です。
恐竜の卵を分析した新たな研究結果から、「体温が外気温に左右されやすいは虫類よりも恐竜の血は温かく、代謝によって体温を一定に保つ能力を持っていた」可能性が高まりました。

一般的に、代謝によって体温を上げられる哺乳類や鳥類のことを「恒温動物」、外部の温度で体温が変化するは虫類などのことを「変温動物」と言います。
しかし、近年では動物の体温制御が多種多様であることが判明していることから、「恒温動物」「変温動物」という使い分けは科学的には使われなくなっているとのこと。

恐竜は長年にわたって、は虫類などと同様に体温が外部の環境に左右されやすい動物だと考えられてきましたが、恐竜が鳥の祖先である可能性が高まるにつれて、「鳥と同様に代謝で体温を上げる能力を持っていたのではないか?」という説も有力となりました。
しかし、近年まで古代生物の体温を調べる手法は間接的なものしかなかったため、恐竜の体温に関する詳しい研究は行われてこなかったそうです。

そこで、アメリカの地球物理学者であるロビン・ドーソン氏の研究チームは、「恐竜の卵の殻」を用いて恐竜の体温を調べるという研究を行いました。
研究チームが使用したのは、炭酸塩鉱物に含まれる酸素18と炭素13という希少な放射性同位体の濃度を調べることで、鉱物が形成された時の温度を割り出すという手法です。

この手法を恐竜の卵に応用することで、「卵が形成された時に母親である恐竜がどれほどの体温だったのか」を知ることができます。
今回の分析に用いられたのは、約7500万年前にカナダに生息していた鳥脚類のマイアサウラと獣脚類のトロオドン、およそ6900万年前にルーマニアに生息していた竜脚下目のティタノサウルス類とみられる小型恐竜の卵の化石です。

分析の結果、マイアサウラの体温は摂氏44度、トロオドンの体温は摂氏36度〜27度、ティタノサウルス類の体温は摂氏36度だったと推定されました。
こうして判明した恐竜の体温を周囲の温度と比較するため、研究チームは恐竜の卵と同じ場所で発見された「無脊椎動物の殻の化石」についても、温度の推定を行いました。
比較対象となった無脊椎動物はいずれも体温が外部に左右されやすいため、無脊椎動物の殻は周辺環境の温度を反映した温度といえます。

恐竜の卵殻と無脊椎動物の殻が形成された温度を比較したところ、いずれの恐竜の卵殻についても、周辺環境より高い温度で形成されたことが判明したとのこと。
マイアサウラは周辺環境より少なくとも摂氏15度ほど、ティタノサウルス類は3〜6度ほど、トロオドンは摂氏10度ほど温かかったそうで、いずれの恐竜にも温かい血が流れていたことが示唆されました。

今回の研究における重要な点として、分析対象となった恐竜たちがそれぞれ別系統の3つの主要な恐竜のグループだったことが挙げられます。それぞれの系統が独立して温かい血を持つように進化したとは考えにくいため、恐竜の共通祖先がこの特性を持っていた可能性があるとのこと。「私たちの発見は、代謝によって体温を上げる能力が、初期の恐竜で進化したことを示唆しています」と、ドーソン氏は述べています。

また、研究チームは恐竜の体の大きさが必ずしも体温の高さと関連していない点が興味深いと指摘。
獣脚類の進化の過程において、羽毛が断熱の役割を持っていた可能性もあるとドーソン氏は主張しました。

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https://gigazine.net/news/20200301-eggshells-suggest-dinosaur-warm-blooded/