新型コロナウイルスによる感染症は拡大の一途をたどっている。このウイルスに感染すると、風邪のような症状だけで済むこともあれば、肺炎を発症し、命を落とすこともある。不安は募るばかりだが、こうした状況で一番大切なのは、この感染症を正しく理解し、正しく恐れること。特に「肺炎」については、誰もがその名前を知っているが、実態を理解している人は少ない。

 そもそも肺炎はどのような病気か、なぜ肺炎で亡くなる人が多いのか。新型コロナウイルスによる肺炎は、これまでとは何が違うのか。肺炎を避け、予防するにはどうすればいいのか。池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんに解説していただく。

●「肺炎」がどんな病気か理解している人は意外と少ない

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大し、収束の糸口が見えない。折しも今は、風邪やインフルエンザだけでなく、スギ花粉症の流行時期にもあたる。咳や鼻水、発熱などの症状が出たとき、「新型コロナでは?」と不安に感じる人も多いだろう。

 安倍晋三首相は、大規模なイベントを2週間自粛するように呼びかけたことに続き、3月2日から春休みまで全国の小中高校と特別支援学校を臨時休校にする、という異例の要請を表明した。まさに前代未聞の事態を迎えている。

 パニックを起こさず冷静に行動するためには、この感染症について正しく理解することが大切だ。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は未知の病原体であり、まだまだ分からないことが多い。だからこそ、誰もが不安を抱えている。

 私たちがまず知っておくべきは、「肺炎」という病気についてだ。新型コロナウイルス感染症において人の命が奪われるのは「肺炎」が原因。まず肺炎について正しく理解すること、それが新型コロナウイルスを「正しく恐れる」第一歩となる。

 しかし、肺炎は誰もが名前を知っている病気だが、正しく理解している人は必ずしも多くはないだろう。具体的にどのような病気で、どんな症状が出るのか、風邪やインフルエンザとは何が違うのか、どう検査を進めるのか――。即答できないことは少なくない。そこで今回の特集では、肺炎を含めた呼吸器疾患のエキスパートとして知られる池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんに解説していただこう。

●ウイルスによる炎症が上気道だけでとどまれば軽症だが…

 そもそも肺炎とは、その名の通り「肺に炎症が起こった」状態だ。多くは感染症で、気道から侵入した細菌やウイルスなどの病原体が肺の中で炎症を引き起こす。なお、感染が原因ではないアレルギー性の過敏性肺炎もある。

 それに対し、風邪は、炎症が起きる場所が違う。別名「上気道炎」というように、気道のうち、食べ物も通る上側「上気道」(喉頭から上)で炎症が起きている。これより奥の、空気しか通らない下部が「下気道」(気管から肺まで)であり、体のさまざまな防御システムがあるため、健康な人なら細菌やウイルスの侵入は許さない。

 つまり、普通の風邪の場合、ウイルスが侵入したとしても上気道止まりとなる。だから、たいていの場合、のどや鼻などの炎症で終わるわけだ。では、新型コロナウイルスはどうなのだろうか。

 「新型コロナウイルスに感染すると、まず風邪のような症状が1週間ほど続きます。多くの人はそれで回復しますが、中には重い肺炎の症状が出る人もいます。つまり、上気道にとどまらず下気道にもウイルスの侵入を許したというわけです」(大谷さん)

なぜ高齢者や持病のある人は重症化しやすいのか?

 ここで理解してもらいたいのは、新型コロナウイルスに感染したとしても誰もが肺炎になるわけではなく、軽症で済むことが多いということ。体の防御システムが機能して、下気道への侵入を阻むことができれば、軽症で収まることも多い。これは中国における患者データの分析の結果からも見えている。

 中国の4万4672人の感染者のデータを分析した結果、新型コロナウイルスの感染が確定した患者の81%は軽症(肺炎ではない患者、または軽症肺炎の患者)で、重症は14%、重篤は5%となっている。

 また、致命率(患者数に対する死亡者数の割合)は2.3%、死亡者の多くが60歳以上か、心血管疾患や糖尿病など持病のある患者だった。

 「軽症で済むかどうかの分かれ道は、ひとえに、体の防御システムが機能するかどうかにかかっています。高齢者や基礎疾患のある方は、免疫力が低下していて、防御システムがうまく働かず、重症化しやすいのです」(大谷さん)

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https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200305-67909132-gooday-hlth